I-P-64
徐脈頻脈症候群の治療により蛋白漏出性胃腸症が改善したファロー四徴症根治術後の症例
九州大学病院循環器内科1),心臓血管外科2),小児科3),PSクリニック4)
井上修二朗1),竹本真生1),中島淳博2),向井 靖1),宗内 淳3),樗木晶子1),加治良一4),砂川賢二1)

症例は24歳男性.生後 9 カ月でファロー四徴症と診断され,心室中隔欠損症閉鎖術,右室流出路形成術,部分肺静脈還流異常修復術,三尖弁形成術,肺動脈弁置換術など合計 4 回の開心術を施行された.また,21歳時 4 回目の開心術後に心房内リエントリー性頻拍(IART)と同時に蛋白漏出性胃腸症(PLE)を発症し,IARTに対してカテーテルアブレーション(ABL) 治療を施行されPLEは改善していた.24歳時に下腿浮腫増悪を認め当院小児科にてPLE再発と診断され当科に紹介入院となった.右上大静脈は心内導管圧排により新たな閉塞が確認され(左上大静脈遺残(LSVC)あり),肺動脈弁狭窄・三尖弁逆流による静脈圧上昇の関与が示唆された.一方でホルター心電図にて繰り返す 2 秒以上のRR延長(洞停止),および複数のIART再発を認め徐脈頻脈症候群もPLE発症への一因と考えられた.したがって上大静脈再建・三尖弁置換術,肺動脈弁再置換術を行い,同時に永久ペースメーカーリード留置を行う方針も検討された.しかし近年Fontan術後のPLEに対して徐脈に対するペーシングがPLE改善に有用であったとの報告があり,まずはIARTに対する可及的ABLとして三尖弁―下大静脈間峡部(CTI)にブロックラインを作成し,薬物治療強化のため洞停止に対して永久ペースメーカー(AAI)の埋め込みの方針とした.ABLの際にEnSiteのVoltageマップにより心房正常電位部を同定し,左上大静脈~冠静脈洞を介して同部位にスクリューインで心房リード留置を行った.そのうえでβ遮断薬内服を開始し頻拍のコントロールを行った.これら徐脈頻脈の治療後は血清蛋白は4.4g/dlから7.2g/dlへと改善し,浮腫などのPLEに関連した症状・所見の改善を認めた.徐脈頻脈性不整脈の治療によりPLEが改善した症例は報告が少なく,文献的考察を加えて報告する.

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