I-P-65
総肺静脈還流異常症術後左心機能の検討
東京女子医科大学心臓血管外科1),循環器小児科2)
豊田泰幸1),岩田祐輔1),石原和明1),平松健司1),岡村 達1),小沼武司1),内藤祐次1),上松耕太1),渡辺成仁1),中西敏雄2),黒澤博身1)

【目的】総肺静脈還流異常症の手術成績は安定してきたが術後遠隔期の心機能は明らかでない.そこで今回われわれは当院で修復術を施行した症例の術後遠隔期左心機能を検討した.【対象】1975~2003年に当院でheterotaxyを合併しないTAPVCに対し修復術を施行した271症例のうち,耐術しPVO合併なく術後遠隔期に心臓カテーテル検査を行った68症例を対象とした.手術時年齢は平均 2 カ月 7 日(1 日~2 歳10カ月).手術時体重は平均3.9(2.2~12.4)kg.Darling分類Ia型20例, Ib型 9 例, IIa型 7 例, IIb型 3 例, III型24例, IV型 5 例.術後平均 5 年11カ月(8 カ月~12年 4 カ月)後に心臓カテーテル検査を施行しLVEDV,LVEF,LVEDPを計測し左心機能を評価した.そのうち11例に心臓超音波検査にて左室拡張能を評価した.【結果】平均LVEDV 117.6(± 21.0)% of N, LVEF 64.3(± 5.2)%, LVEDP 10.5(± 2.2)mmHgであり,左室容積,左室収縮能は正常であるが,LVEDPが予想より高く潜在的な左心不全が疑われた.LVEDVは正常値以上であり,またLVEDVとLVEDPに相関性がないことより左室発育や左室容量は原因でないと考えられた.またLVEFも正常値であり,またLVEFとLVEDPにも相関性はなく収縮能が原因でないと考えられた.そのためLVEDP高値の原因として左室拡張障害が示唆された.心臓超音波検査にて左室拡張能評価として左室流入波形にてE/Aを調べたが,調査した11症例の平均LVEDPは11.9とやはり高かったが平均E/Aは2.1であり拡張不全は認められなかった.【結語】LVEDP高値に関して潜在的左心不全が疑われるが,今回の調査では明らかにできなかった.今後さらなる検討が必要と考えられた.

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