I-P-66
術後の完全房室ブロックに対してペースメーカ治療を施行後,8 年後に房室伝導の回復が確認されたVSD・ASD・PDA・PH,ダウン症候群の 1 例
札幌医科大学小児科1),北海道立子ども総合医療・療育センター循環器科2),札幌医科大学第二外科3)
堀田智仙1),長谷山圭司1),高室基樹1,2),高木伸之3)

【はじめに】術後に完全房室ブロック(CAVB) が一定期間(多くは 1~2 週間)以上持続する場合,ペースメーカ治療を検討する必要があるとされる.一方,ペースメーカ植込み後に房室伝導が回復することが少なからずあるとの報告もある.しかし,その多くは術後 3 カ月以内に生じている.今回,われわれはペースメーカ植込み 8 年後に房室伝導の回復が確認された 1 例を経験したので報告する.【症例】現在13歳の男児. ダウン症候群,VSD,ASD,PDA,PH.1996年 7 月 1 日(1 歳 9 カ月),VSD patch closure +ASD direct closure +PDA ligation施行.術後にCAVBを生じ,同年 7 月18日にペースメーカ植込み術(VVI mode,lower rate 100ppm)施行.1996年12月,肺炎で近医入院中にPM failure(原因不明),そのため低酸素性脳症の後遺症を生じる.1998年 8 月(3 歳10カ月),1 回目のジェネレーター交換.この時,CAVBであることを確認(temporary pacingに変更し,pacing rateを下げてみたところ,自己脈は35~40bpmで出現).2005年 1 月(10歳 4 カ月)2 回目のジェネレーター交換.この時,自己脈80bpmで房室伝導が回復していることが確認された.現在,ペースメーカの設定をVVI mode, lower rate 75ppmとしているが,ペーシング作動率は32%でback up pacingのみの状態となっている.【考察】本症例は 1 回目のバッテリー交換時(術後 2 年)にはCAVBのままであったが,2 回目のバッテリー交換(術後 8 年)で房室伝導の回復が確認された.少なくとも術後 2 年間はCAVBの状態が続いた後に,房室伝導が回復したと考えられる.

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