I-P-67
新生児・乳児期開心術後の運動発達に影響を及ぼす諸因子
国立循環器病センター心臓血管外科
松崎多千代,萩野生男,鍵崎康治,八木原俊克

【目的】新生児・乳児期開心術後,発達検査(Bayley検査)を施行し高次機能について検討してきた.精神発達と運動発達では,後者により高度の遅延が認められると指摘されており,本研究では,運動発達に着目しそれに影響を及ぼす諸因子との関連を検討した.【方法】患児対象は,2004年 5 月以降,生後 6 カ月未満に開心術を施行し,かつ12カ月時にBayley検査を行った56名(VSD 44,TGA 7,CoA/IAA 5).運動発達(PDI),精神発達(MDI),検査中の志向性・関与,情動表出の度合いを算出し,PDIにより 2 群に分け,諸因子(在胎週,出生体重,アプガースコア,疾患,術日齢,術時体重,体外循環時間,大動脈遮断時間,ICU滞在期間,術後入院日数,発達評価時体重)との関連を検討した.【結果】全体のPDIは,81.1 +/- 15.1であった.高度の運動発達遅延を認めるPDI 70未満のA群(n = 19:つたい歩き可26.3%)と,PDI 70以上のB群(n = 37:つたい歩き可78.4%)に分類.MDIはA群81.7 +/- 8.0,B群93.1 +/- 10.0でありA群が有意に低く(p < 0.001),志向性関与(p = 0.20),情動制御(p = 0.94)に有意差はなかった.各群におけるPDIとMDIとの関連は,B群で有意な相関を認めたものの(r = 0.35,p = 0.03),A群には相関がなかった(r = -0.02,p = 0.92).両群間における諸因子の比較では,術日齢以外に有意差はなかった(A vs. B:平均59.4 vs. 93.4日,p = 0.04).それぞれの群におけるPDIと諸因子との相関は,B群:術日齢(r = -0.35, p = 0.04)であった.【考察】新生児・乳児期開心術後の生後12カ月時における運動発達は,術日齢や精神発達と相関し,ICU滞在日数や術式との関連は認めなかった.発達検査を用いたフォローアップは,術後発達遅延の原因究明と予防においてその有用性が示唆された.

閉じる