I-P-68
Fontan術後の肝逸脱酵素・肝線維化マーカーの推移に関する検討
順天堂大学医学部小児科
古川岳史,秋元かつみ,大高正雄,佐藤圭子,大槻将弘,鈴木光幸,高橋 健,稀代雅彦,清水俊明

【目的】Fontan(F)手術後はさまざまな遠隔期合併症が問題となるが,その一つにうっ血性肝障害がある.肝障害の指標として肝逸脱酵素,肝線維化マーカーの推移,CVPとの関連を検討した.【対象】1994年以降にF手術を施行し,2008年12月までに術後 1 年以上経過している31例のうち,院内死亡 4 例を除き,さらに追跡可能な23例(男17例,女 6 例).【方法】F術後 1~2 年,3~5 年,6~10年,10年以上の 4 期間に分類し,肝逸脱酵素・肝線維化マーカーの推移を検討した.また同時期に心臓カテーテル検査を施行した症例はCVPとの相関も検討した.【結果】手術時年齢は1.0~6.9歳(平均3.1),追跡期間は術後2.2~14.2年(平均8.2)であった.AST,ALT,4 型コラーゲン(4-C),ヒアルロン酸(HA)の各期間の推移はそれぞれAST(IU/l):39 ± 14,38 ± 12,29 ± 8,28 ± 10,ALT(IU/l):26 ± 11,27 ± 11,28 ± 8,28 ± 10,4-C(ng/dl):286 ± 93,265 ± 93,305 ± 143,206 ± 70,HA(ng/dl):32 ± 31,41 ± 27,57 ± 49,61 ± 9.これらの数値を各期間で比較検討したがすべての項目で有意差はなかった.またCVPと4-C関連では有意な相関がみられたが,HAに相関は認めなかった.HAが優位に高値を示した例で蛋白漏出性胃腸炎により死亡した症例があり,剖検では慢性うっ血肝に伴う肝硬変の所見が得られた.【考察】AST,ALT,HAは多くの症例で正常範囲内であり肝障害の指標にはなり得なかった.4-Cは各期間において高値で,またCVPとの相関があり,ある程度のうっ血性肝障害の指標となり得ると考えた.しかし時間経過による変動はなく肝障害の進行は反映しない可能性がある.F術後は肝線維化を念頭に置き4-Cなどのマーカーのほかに超音波やMRIなどの画像検査を併用し経過を見る必要がある.

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