I-P-70
神奈川県立こども医療センターにおけるTCPC転換術施行例の検討
神奈川県立こども医療センター循環器科1),心臓血管外科2)
岩岡亜理1),関根佳織1),宮田大揮1),柳 貞光1),上田秀明1),康井制洋1),麻生俊英2)

【背景】フォンタン型手術後には心不全症候,運動耐容能の低下,静脈うっ滞による合併症,不整脈,血栓塞栓症等が認められる.難治性の合併症を伴う症例では,再手術としてTCPC転換術を行うことがある.【目的】当センターにおけるフォンタン型手術施行例からTCPC転換術の適応,至適時期を検討する.【方法】当センターで1981~2000年に施行された心房―肺動脈吻合術(atrio-pulmonary connection:APC)症例31例の予後を示し,2004年以降にTCPC転換術を施行した 5 症例の術前後の心不全,不整脈,肝機能障害等のフォンタン型手術後合併症,QOLについて比較検討する.【結果】当センターにおけるAPCの生存率は10年で71%であった.基礎心疾患は三尖弁閉鎖が最も多く,APC後の観察期間が10年以上の22症例において,治療を要する不整脈の発症率は10年で60%であった.TCPC転換術施行例は 5 例で,8.0 ± 2.4歳時にAPCを施行されており,全例が内科的に治療困難な不整脈のため,APC後17.1 ± 3.6年でTCPC転換術を施行されていた.すべての症例で手術時にMaze手術またはペースメーカー植え込み術が行われた.全例で術後に不整脈は改善している.手術時の病理所見で右心房壁の線維化を全例で認めている.また,術後,HANP,BNPは有意に低下したが,NYHAに変化は認められていない.インタビュー上はQOLの改善をみている.【考察】APC型フォンタン手術後には持続する上室性不整脈や洞不全により心不全を伴うことが多く,QOLの低下や突然死の原因となっていると考えられる.APC術後10年経過しており,内科的治療に抵抗性の不整脈がある場合はTCPC転換術および同時不整脈手術の適応と考えられる.

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