I-P-71
TCPC conversionにおける血清BNP値の意義
東京女子医科大学循環器小児科
島田衣里子,稲井 慶,竹内大二,清水美妃子,篠原徳子,山村英司,富松宏文,森 善樹,中西敏雄

【はじめに】われわれは右房肺動脈吻合(APC)を行った患者でBNPが200pg/ml以上である場合心房性不整脈などの心血管系イベントのおこる指標の一つと考えられることを報告した.今回は当院で1992年以降にTCPC conversionが行われた症例について,conversion前後でのBNPの推移を検討した.【方法】対象は1992~2008年に当院でTCPC conversionを行った31人.うち 1 人はTCPC conversionが 2 回目であったため除外し,残り30人のうちconversion前後にBNPを測定していた22人について検討を行った(男性 9 人女性13人,conversion時平均年齢26歳 7 カ月).【結果】Fontan手術後からconversionまでの経過年数は平均15年 0 カ月であった.Fontan手術の術式はBjörkが 6 人,APCが16人であった.22例のBNPの前後の値は有意に低下していた(前187 ± 125pg/ml, 後64 ± 39pg/ml).これをBjörkとAPCで比べた場合,conversion前のBNPの値はAPCのほうが高い傾向があったが(Björk 148pg/ml, APC 251pg/ml),conversion後は両者とも同程度に低下していた.Conversion後死亡例のBNPは生存例と比較して有意に高値であった(死亡例372pg/ml,生存例177pg/ml).【結語】ConversionはBNP 200pg/ml前後で行われている症例が多かった.術前のBNP300pg/ml以上はTCPC conversionの危険因子である可能性がある.Fontan術後患者のBNPはTCPC conversionによって有意に低下するが,TCPC患者のBNPの臨床的意義についてはさらに追跡調査が必要と思われる.

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