I-P-73
成人チアノーゼ型先天性心疾患患者の甲状腺機能について
KKR名城病院小児循環器科
小島奈美子,小川貴久

【背景】甲状腺機能異常は一般成人の約 5~10%にみられ,成人先天性心疾患患者(以下ACHD)のフォロー中も甲状腺機能亢進や低下を来して心不全が増悪することがある.甲状腺ホルモンは心拍数,末梢血管抵抗,循環血液量,ANPやBNPの調節などに関与しているため,特に慢性心不全を伴いやすいチアノーゼ残存ACHD患者(以下ACCHD)にとって甲状腺機能のコントロールはADLを保つうえで重要な役割を担うと思われる.【目的】ACCHD患者の甲状腺機能について検討すること.【対象】当院小児循環器科でフォロー中のACCHDのうち甲状腺の採血チェックを行った16名,男性 8 名.年齢20~42歳.【方法】甲状腺疾患に対する治療歴の有無および採血データのTSH,fT3,fT4値から甲状腺機能亢進群(A),低下群(B),正常群(C)に分け症状の有無,異常値発見の経緯,BNP値,不整脈や心不全での入院歴などについて検討した.【結果】A群 2 名,B群 5 名,C群 9 名.A群のうち 1 名は無症状,もう 1 名は心房粗動と心不全の症状がみられ抗甲状腺薬で治療中,NYHA 3 度である.B群のうち 1 名は無症状,3 名はTSH高値,fT3,fT4正常の潜在性甲状腺機能低下で,残りの 1 名はアミオダロン内服中に全身倦怠感の症状がみられ,甲状腺ホルモン薬で治療中,不整脈による心不全・脳梗塞後の脳性麻痺の状態である.【まとめ】16名中 7 名に甲状腺ホルモンの数値異常がみられた.うち有症状で治療を要したものは 2 名であり,表現形としてはACCHDによくみられる頻脈性不整脈と全身倦怠感で,いずれも治療開始後症状改善を認めた.【結語】ACCHDの心不全や不整脈,ADLのコントロールにおいて甲状腺機能のチェックは一助となり得る.また,無症候性や潜在性機能異常の合併率も高く注意深いフォローが必要である.

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