I-P-75
キャリーオーバーした成人チアノーゼ型先天性心疾患患者における血清シスタチンC値の検討
九州大学病院小児科1),九州大学病院心臓血管外科2),福岡市立こども病院新生児循環器科3)
池田和幸1),宗内 淳1),山村健一郎1),山口賢一郎1),田ノ上禎久2),塩川祐一2),富永隆治2),総崎直樹3)

【背景】血清シスタチンC値(CysC)は腎機能障害の早期マーカーであると同時に心不全患者のイベント発症因子でもあり,キャリーオーバーしたチアノーゼ性先天性心疾患(CCHD)患者でも予後やチアノーゼ腎症発症予測因子としての有用性検討が望まれる.【対象と方法】対象はCCHD患者10人[男性 9 人女性 1 人,年齢33 ± 9(25~48)歳]で,基礎疾患は単心室 7 人,Eisenmenger症候群 3 人(ダウン症 1 人),NYHA分類はI-II度が 7 例,III-IV度が 3 例であった.CysCと各臨床データとの相関を検討した.【結果】CysC 0.96 ± 0.26(0.65~1.32)mg/dl,Cr 0.92 ± 0.15(0.71~1.13)mg/dl,SpO2 79 ± 7(70~88)%,血圧102/70(90~114/50~92)mmHg,CTR 55 ± 11(46~74)%,Hb 20 ± 3(17~26)g/dl,Ht 61 ± 11(51~79)%,MCV 89 ± 8(74~98)fL,Plt 11.8 ± 4.6(6.5~17.2)/μl,Alb 3.8 ± 0.7(2.5~4.5)g/dl,BNP 322 ± 476(24.9~1,237.0)pg/ml,Crクリアランス(MDRD法) 66 ± 12(53~90)ml/min/m2であった.検尿では蛋白尿を 4 例,血尿を 3 例に認めた.単変量解析ではCysCとアルブミン(r = -0.70),MCV(r = -0.68)との間に有意な相関がみられ,HR(r = 0.63),SpO2(r = 0.61) とも弱い相関がみられた.多変量解析ではCysCと各臨床データとの間に有意な相関はみられなかった.尿所見異常を認めた群と認めなかった群ではCysCに有意差はなかった.【考察】チアノーゼ腎症による重度腎機能低下は1.6%とされ,本検討も軽度腎機能低下患者を対象とし血清CrよりCysCが腎機能を反映する.低酸素血症,小球性赤血球による糸球体毛細管内皮細胞におけるズリ応力の上昇が,チアノーゼ腎症発症への引き金となっている可能性が示唆された.

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