I-P-79
出生前グルココルチコイド投与による胎仔および新生仔ラット心筋のクレアチンキナーゼの増加
聖マリアンナ医科大学小児科1),薬理学2)
水野将徳1,2),武半優子2),麻生健太郎1),都築慶光1),有馬正貴1),後藤建次郎1),栗原八千代1),村野浩太郎1),小林真一2)

【背景】新生児医療における出生前グルココルチコイド(GC)療法の臨床的有用性は広く知られているが,基礎的な面から言及した研究は少ない.われわれはこれまで出生前GC投与が胎仔または新生仔ラットの心臓機能に与える効果を報告してきた.【目的】妊娠ラットにGCを投与し,その胎仔および新生仔ラット心臓機能に関与するクレアチンキナーゼ(CK)に着目し,その影響を検討した.【方法】妊娠ラットにデキサメサゾン(DEX)を皮下投与し,胎生19日,21日に帝王切開した胎仔ラットまたは日齢 1 日の新生仔ラットの心臓を実験に供した.CKアイソザイムであるCK-M type(CKM)とミトコンドリアCK(MiCK)のmRNA発現量をリアルタイムPCR法で解析した.心筋ミトコンドリアのCK発現はウエスタンブロット法と免疫組織染色で比較した.また,ミトコンドリア機能解析をJC-1(5,5’,6,6’-tetrachloro-1,1’,3,3’-tetraethyl-benzimidazolocarbocyanine iodide)の取り込みにより行った.【結果】胎仔および新生仔ラットの心臓における心筋および心筋ミトコンドリア中のCKは,ウエスタンブロット法においてコントロール群に比しDEX群は有意に発現した.19日,21日胎仔および新生仔ラットの心臓におけるCKM,MiCKのmRNAの発現は,DEX投与により有意に増強した.組織免疫染色で心筋ミトコンドリア中のCKは有意に染色された.JC-1取り込みもDEX群で有意に増加していた.【考察】心筋収縮に関与する酵素として重要なCKは,出生前GC投与により胎仔心臓でDEX群において有意に増加し,また胎生期の心筋において未成熟なミトコンドリア機能も増強した.【結論】出生前GC投与は未成熟な胎児心機能の発達に関して促進的に作用する可能性が示唆された.

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