モーニングセミナー 
先天性心疾患のマルチスライスCT三次元診断と今後の展開
白石  公
国立循環器病センター小児循環器診療部
 先天性心疾患の診断を正確に行うことを目標としてこれまでにさまざまな画像診断装置が開発されてきた.心血管造影検査は先天性心疾患の診断におけるゴールデンスタンダードとして長年にわたりわれわれに大変豊富な情報を提供し,カラードップラーを含めた断層心エコー検査は形態診断のみならず,血流動態をリアルタイムに描出する診断装置として大きく発展してきた.しかしながら心大血管の解剖学的異常を正確に診断し,患児の生涯にわたる良好なQOLを配慮した安全な手術を行うためには,できるだけ侵襲の少ない方法によって分かりやすい三次元画像を得ることが先天性心疾患の診断における究極の目標であった.近年のコンピューター画像処理技術の目覚ましい進歩により,リアルタイム三次元エコー,MDCT,MRIに代表される三次元画像診断が飛躍的に発展した.これらの検査は短時間に非侵襲的に三次元画像が得られるために,先に述べた二次元画像診断装置の抱える多くの難点を克服できるようになった.とくにここ数年のMSCTの進化は目覚ましく,小児では被ばくの問題は避けて通れないものの,複雑な先天性心疾患において,心血管造影検査を上回る三次元画像情報を得ることが可能となってきた.今回これまで我々が経験した先天性心疾患における代表的な画像を提示するとともに,MSCTの有用性と被ばくに関する問題点,三次元画像情報の応用,光造形法による心奇形レプリカ作製と手術シミュレーションを含む,希少な剖検心のアーカイブ化,そして最新式の320列ADCTの紹介など,MSCTの今後の展開について解説する.

文献
1.白石 公,他:先天性心疾患におけるヘリカルCT診断.白石 公(編集).メジカルビュー社,2004.
2.白石 公:CT/MDCTの有用性と限界へのチャレンジ.Heart View 2008:12;1188-1199.


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