日本小児循環器学会雑誌  第24巻 第1号(3-10) 2008年

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著者

三浦 大

所属

東京都立清瀬小児病院循環器科

要旨

川崎病の原因は不明であるが,遍在する病原体が関与している可能性が高い.川崎病急性期の病理検体において,IgA形質細胞が冠動脈や他の炎症組織に浸潤し,対照に比し上気道に有意に増加している所見が認められた.マクロファージとCD8陽性T細胞も,炎症組織に著明に浸潤していた.川崎病の血管から得られたIgAの遺伝子は,通常の抗原刺激に由来することを示唆するoligoclonalな塩基配列を示した.この配列を基に合成した抗体によって,川崎病の気管支上皮細胞に抗原が検出されたが,対照では検出されなかった.この抗原は,ウイルスの蛋白質と核酸が凝集して産生される細胞質封入体に存在していた.また,合成抗体によって,冠動脈瘤や炎症の強い消化管の組織において,マクロファージの一部にも抗原が検出された.以上の所見は,未知の気道感染性の病原体が,おそらくマクロファージに感染し,血行性に冠動脈などの標的臓器に伝播することにより,川崎病が発症することを示唆する.

平成19年5月7日受付
平成19年11月21日受理

キーワード

antigen,IgA,immunohistochemistry,Kawasaki disease,synthetic antibody

別冊請求先

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東京都立清瀬小児病院循環器科 三浦 大