日本小児循環器学会雑誌  第24巻 第2号(129-137) 2008年

著者

川田 博昭1),岸本 英文1),盤井 成光1),石丸 和彦1),齊藤 哲也1),萱谷 太2),稲村 昇2),北 知子2),河津由紀子2),青木 寿明2)

所属

大阪府立母子保健総合医療センター心臓血管外科1),小児循環器科2)

要旨

目的:両方向性Glenn(bidirectional Glenn:BDG)術後のFontan(F)術までの経過期間と肺動脈発育の関係を検討する.
対象:BDG術を行った82例中,最終F術に到達した37例のうち,F術後肺動脈造影像を得た24例.手術年齢は,BDG:1歳1カ月~8歳1カ月(中央値2歳),F:1歳7カ月~15歳11カ月(4歳8カ月)であった.
方法:BDG術後F術までが1年未満(7カ月,3例),1~2年(7例),2年以上〔2~7.5年(中央値2年11カ月),14例〕の3群に分類し,PA–index,pulmonary arterial pressure(PAP),SaO2,SVEDVIを比較した.
結果:PA–index(BDG術前,BDG術後,F術後)(mm2⁄BSA)は,1年未満群(376,265,293),1~2年群(460,308,274),2年以上群(462,333,266)で経時的な有意差を認めたが,F術後の3群間に差はなかった.PA–indexの最小値例はBDG血流のみの1例で,BDG術前201mm2⁄BSA,BDG術後80mm2⁄BSA,F術後118mm2⁄BSAであったが,F術後のPAPは12mmHgで経過良好である.2年以上群14例中6例(うちright atrial isomerism2例,left atrial isomerism2例)は,BDG術後SaO2に変化を認めず,PAPが16.3 ± 3.8から12 ± 3.6mmHgと有意に低下して,BDG術後2.1~7.5年でF術を施行した.
まとめ:BDG術後F術までが1年以上でも,F術後の肺動脈発育不良を認めなかった.長期経過中に肺血管抵抗が低下して,F術適応となった症例も認めた.

平成19年1月16日受付
平成19年12月19日受理

キーワード

bidirectional Glenn,PA–index,Fontan procedure

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大阪府立母子保健総合医療センター心臓血管外科 川田 博昭