日本小児循環器学会雑誌  第24巻 第5号(636-639) 2008年

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著者

長嶋 光樹1),日比野 成俊1),高野 信二1),堀 隆樹1),石戸谷 浩1),黒部 裕嗣1),米沢 数馬1),山本 英一2),太田 雅明2),大藤 佳子2),檜垣 高史3)

所属

愛媛県立中央病院心臓血管外科1),小児科2),愛媛大学医学部小児科3)

要旨

Down症候群は,一過性骨髄異常増殖症(transient abnormal myelopoiesis:TAM)の発症が約10%に認められ,なかには,一度消退した後に真の白血病を発症するものもある.TAMを伴うDown 症候群は先天性心疾患を合併する率が高いと報告されている.TAMを合併するDown症候群に対する心臓手術を 2 例経験したので報告する.2 例とも心疾患は肺高血圧症を伴う心室中隔欠損(VSD)であった.出生直後から末梢血白血球数の異常高値および骨髄芽球増多を認め,骨髄穿刺では骨髄芽球の割合が末梢血のそれより少ないなど,TAMないし先天性白血病と診断された.高肺血流による肺うっ血症状があり,外科治療による介入が必要と考えられた.高粘稠症候群による血栓塞栓の発症を避けるべく,白血球数の減少を待ち,血小板減少による出血傾向を避けるため血小板輸血を行い,肺動脈絞扼術(PAB)を新生児期に施行した.いずれも術後著明な心嚢水の貯留を認め,ドレナージ術を必要とした.その後の合併症はなく経過した.1 例目は 1 歳 6 カ月時に,2 例目は 9 カ月時に,VSD閉鎖および肺動脈形成術を施行した.2 例目は,術直後,血小板減少を認め,血小板輸血を必要としたが,その後は安定した.両症例とも今後,白血病化への可能性があるため,注意深い観察が必要である

平成19年6月20日受付
平成20年4月28日受理

キーワード

transient abnormal myelopoiesis,Down syndrome,congenital heart disease,cardiac surgery,leukemia

別冊請求先

:〒791-0295 愛媛県東温市志津川
愛媛大学医学部附属病院脳卒中・循環器病センター,臓器再生外科学 長嶋 光樹