日本小児循環器学会雑誌  第24巻 第6号(690-696) 2008年

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著者

春日 亜衣1,2),高室 基樹2,3),堀田 智仙2),長谷山圭司2),阿部なお美3),畠山 欣也3),横澤 正人3),富田  英4)

所属

町立別海病院小児科1),札幌医科大学小児科2),北海道立子ども総合医療・療育センター循環器病センター3),昭和大学横浜市北部病院循環器センター4)

要旨

背景:重症先天性心疾患に対する初期治療は予後を決める重要な因子とされる.
対象と方法:2001~2006年に都市部から離れ小児の集中治療が不可能な北海道内地域中核病院で出生し,精査・加療のため生後早期に高次病院への長距離搬送を要した11例の重症先天性心疾患症例について調査,検討した.
結果:心疾患は心雑音や経皮的動脈血酸素飽和度の低値を契機に疑われ,出生18.4 ±20.4時間後に行われた心エコー検査により診断がなされた.一次搬送は出生20.1 ±21.3時間後に行われ,所要時間は平均1.9時間だった.4 例が二次搬送を要し,いずれも航空機で行われた.死亡退院が 3 例あり,いずれも航空機搬送が行われた症例だった.
結論:重症先天性心疾患児を早期発見する方法として全出生児の経皮的動脈血酸素飽和度評価や呼吸障害のある児や染色体異常が疑われる児に対する早期心エコー検査などが考えられる.また,胎児スクリーニングの普及によってリスクの高い長距離搬送自体が減少する可能性がある.ドクターカーや遠隔診断の普及も有用と思われるが課題が多い.

平成19年12月3日受付
平成20年9月16日受理

キーワード

transport,congenital heart disease,neonate,rural area,prenatal diagnosis

別冊請求先

〒006-0041 札幌市手稲区金山 1 条 1 丁目240-6 北海道立子ども総合医療・療育センター特定機能周産期母子医療センター 春日 亜衣