日本小児循環器学会雑誌  第24巻 第6号(730-734) 2008年

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著者

厚美 直孝1),河田 光弘2),香取 竜生3)

所属

東京都立八王子小児病院心臓血管外科1)東京大学医学部心臓外科2),小児科3)

要旨

症例は女児で,生後 2 日にチアノーゼを主訴に当院新生児科に入院した.心エコーでは,拡張期に右房から三尖弁を超えて右室内腔まで突出する巨大な膜様の構造物を認め,合併した心房中隔欠損は右左シャントを呈していた.入院後,低酸素血症は徐々に改善したが,膜様の構造物に退縮が認められず,覚醒時には心拍数200/分以上の頻脈が続くことから生後 2 カ月で手術を施行した.手術では膜様の構造物を切除し,心房中隔欠損を縫合閉鎖した.術後経過は良好で,心拍数も安定して第11病日に退院した.病理所見では心内膜線維弾性症(endocardial fibroelastosis)の所見を認めた.膜様の構造物は三尖弁輪との狭い間隙から右室に流入する乱流によって生後も厚さを増すことが考えられた.本症例では乳児期にチアノーゼが消失したが,右室流入路に狭窄があり心エコーで乱流を認めた場合には手術適応になると考えられた.

平成20年1月29日受付
平成20年7月16日受理

キーワード

cor triatriatum dexter,Eustachian valve,Thebesian valve,infant,cardiac surgery

別冊請求先

〒193-0931 東京都八王子市台町 4-33-13 東京都立八王子小児病院心臓血管外科 厚美 直孝