日本小児循環器学会雑誌 第25巻 第1号（27-33） 2009年
著者
山口 幸子，水野寛太郎
所属
名古屋市立大学大学院医学研究科新生児・小児医学分野
要旨
背景：これまでに小児循環器領域におけるinterlocking detachable coil（以下IDC）を用いた血管塞栓術についての報告は比較的少ない．
方法：1999年 1 月から2007年 4 月までの間に当院の小児循環器領域で先天性心疾患および肺動静脈瘻に対して施行した19例，延べ22回のIDCを用いた血管塞栓術について，後方視的にその塞栓効果，安全性を検討した．IDCの使用適応基準は，コイルの脱落や末梢側への流出が禁忌と考えられる以下の塞栓とした．（1） fenestrated Fontan症例の人工血管で作製されたfenestration，（2） Fontan手術前後に発達した上大静脈側から肺静脈への側副静脈および左上大静脈，（3） bidirectional Glenn（以下BDG）手術後に発達した上大静脈側から体静脈への側副静脈，（4） 血流量の多いaorto-pulmonary collateral artery（以下APCA），major aorto-pulmonary collateral artery（以下MAPCA），（5） 冠動脈瘻，（6） 血流量の多い肺動静脈瘻．
結果：APCAおよびMAPCA（9 回），肺動静脈瘻（4 回），fenestrated Fontan手術後のfenestrationのための人工血管（2 回），Fontan手術前後の鎖骨下静脈から肺静脈への側副静脈（2 回），BDG手術後に発達した冠静脈洞へ流入する左上大静脈（2 回），BDG手術後に発達した鎖骨下静脈から体静脈への側副静脈（2 回），冠動脈-右室瘻（1 回）の延べ22回の塞栓に対してIDCが用いられ，いずれもaccidental release, コイルの脱落や流出，溶血，再疎通を認めることなく，安全かつ確実な塞栓が行われた．
結論：IDCを用いた塞栓術においては，形状，安定性を確認しながら塞栓血管に適合した留置コイルを作製することにより，血流量の多い血管や内径が均一な血管，留置部位が限られる血管においても固定性の良い安全な塞栓が可能であった．本方法は，先天性心疾患の塞栓治療において，上記の適応のようにコイルの脱落や流出が懸念される場合に有用であると考えられた．
平成19年3月19日受付
平成20年9月25日受理
キーワード
interlocking detachable coil，mechanically detachable coil，coil embolization，congenital heart disease，fenestration
別冊請求先
〒467-8601 名古屋市瑞穂区瑞穂町川澄 1 名古屋市立大学大学院医学研究科新生児・小児医学分野 山口 幸子