日本小児循環器学会雑誌  第25巻 第2号(91-95) 2009年

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著者

榎本 淳子

所属

東洋大学文学部

要旨

背景:医療技術の発展は先天性心疾患患者の長期生育を可能とし,それに伴い彼らの社会的な自立が新たな課題となっている.ここでは成人期に達した20,30歳代女性の心疾患患者の心理的特徴について検討し,自立について考えていく.
方法:成人先天性心疾患の患者(adult with congenital heart disease:ACHD)群19名および統制群45名を対象に,1. 独立意識尺度,2. 問題解決尺度,3. Locus of Control尺度,4. 自尊感情尺度の 4 尺度から成る質問紙調査を実施した.
結果:4 つの尺度において,疾患の有無,性別で平均値に差があるか検討したところ,独立意識尺度の「親への依存性」でのみ女性のほうが男性より得点が高かった.またこの独立意識尺度と他尺度との関連について調べたところ,ACHD群の女性においてのみ「親への依存性」と問題解決尺度の「問題解決への自信」に正の有意な相関がみられ,他群では「独立性」と「問題解決への自信」に正の有意な相関がみられた.
結論:疾患の有無によって尺度の平均値に差はなく,心疾患の有無は自己評価にあまり影響を与えていなかった.またACHD群の女性は親に依存するなかで,日常生活で生じる問題を解決する自信を得ていることが示唆された.

キーワード

adult with congenital heart disease,young adult,psychological aspect,independence

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東洋大学文学部 榎本 淳子