日本小児循環器学会雑誌  第25巻 第2号(102-109) 2009年

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著者

南沢  享

所属

早稲田大学先進理工学部生命医科学科

要旨

筋小胞体は,細胞内Ca2+貯蔵庫として発達した細胞内小器官である.心筋の収縮弛緩時における細胞内Ca2+濃度の変化は,おもに心筋筋小胞体でのCa2+の出入りによって制御されている.その制御に主役を演じる分子は,筋小胞体からCa2+を放出する心筋ライアノジン受容体(ryanodine receptor:RyR2)と,筋小胞体へCa2+を取り入れる心筋筋小胞体膜Ca2+ポンプ(筋小胞体Ca2+ ATPase:SERCA2a)である.さらに心筋筋小胞体には,RyR2やSERCA2aに相互作用する分子が多く存在し,それぞれの機能を巧妙に調節している.心筋筋小胞体機能の低下や異常は,心不全の発症・進行に極めて深刻な影響を及ぼす.さらに,心筋筋小胞体分子の遺伝子変異が,心筋症や致死性不整脈の原因となることがわかってきている.心不全や不整脈に対する本質的な治療法の開発を考えるとき,心筋筋小胞体蛋白は新たな標的として非常に重要である.

キーワード

Ca2+,sarcoplasmic reticulum,ryanodine receptor,sarcoplasmic reticulum calcium ATPase 2a,heart failure