日本小児循環器学会雑誌  第25巻 第6号(800-807) 2009年

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著者

稲村 昇1),萱谷 太1),北 知子1),河津由紀子1)川田 博昭2),盤井 成光2),岸本 英文2)

所属

大阪府立母子保健総合医療センター小児循環器科1),心臓血管外科2)

要旨

背景:肺静脈形態は無脾・多脾症候群の生命予後を左右する重要な因子であるが,心房還流型の肺静脈を呈する同症候群の肺静脈形態は明らかでない.
目的:心房還流型肺静脈の解剖学的特徴と臨床経過への影響を明らかにする.
方法:Fontan待機の同症候群50例にCTを行い,肺静脈と周辺臓器の関係を調べた.12例が多脾症,38例が無脾症である.
結果:27例で左右の還流部は脊柱の左右に分かれ,肺静脈還流部の中心は脊柱前面に位置していた(central type).一方,他の23例で左右肺静脈還流部は脊柱のどちらか一方に偏位し,片側の肺静脈が脊柱を乗り越える形態を呈していた(distant type).肺静脈狭窄はcentral typeで12例に診断し, 5 例は両側狭窄,7 例は片側狭窄であった.distant typeは12例に肺静脈狭窄を診断し,すべて片側狭窄であった.狭窄の原因は,両側狭窄が心房接合部の狭窄であり,片側狭窄は肺静脈が脊柱,下行大動脈と拡大した心房によって挟まれることであった.両側狭窄の 5 例中 1 例が生存した.片側狭窄の19例中 9 例が生存し,うち 7 例で肺静脈狭窄の解除を行い,Fontan手術を完了した.肺静脈狭窄を認めなかった26例は22例が生存し,15例でFontan手術を完了した.
結語:心房還流型肺静脈における肺静脈狭窄は,無脾・多脾症候群の見過ごされてきたFontanリスクファクターである.

平成20年4月10日受付
平成21年9月17日受理

キーワード

asplenia,polysplenia,pulmonary venous stenosis,helical CT

別冊請求先

〒594-1101 大阪府和泉市室堂町840 大阪府立母子保健総合医療センター小児循環器科 稲村  昇