日本小児循環器学会雑誌  第26巻 第1号(78-82) 2010年

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著者

木村 光裕1),本田 義博1),打田 俊司1),西野 貴子1),豊田 泰幸1),原田 順和1),里見 元義2),安河内 聰2),瀧聞 浄宏2)

所属

長野県立こども病院心臓血管外科1),循環器科2)

要旨

背景:総肺静脈還流異常(TAPVC)の混合型は,多様な還流形態を示し,術式については意見の分かれるところである.
目的:混合型TAPVCの主となる肺静脈のみを修復した手術症例につき,術後の遺残肺静脈の経過を評価した.
対象・方法:対象は混合型TAPVCに対し手術を行った8例.7例で主となる肺静脈のみの修復を行い,1例で完全修復を行った.これら8症例を心臓カテーテル検査,心臓超音波検査,胸部X線写真で評価した.
結果:術後早期に4症例で遺残肺静脈還流の閉塞を認めたが,これに伴う肺うっ血,呼吸・循環動態の異常は認めなかった.2症例で遺残肺静脈還流の増加を認め,遺残還流の修復術を必要とした.全肺静脈修復をした1例で術後カテーテル検査にて1本の肺静脈還流残存が発見された.全症例での術後右室圧,正常右室拡張末期容積比,心胸郭比(CTR)はそれぞれ34±4 mmHg,134±15%,52±4%であった.
結語:混合型TAPVCの初回手術で一部の肺静脈還流を残存させる術式において,術後に吻合部狭窄が生じた場合には遺残肺静脈還流が増加し,修復が必要になることがある.

平成20年8月14日受付
平成21年10月27日受理

キーワード

total anomalous pulmonaly venous connection,mixed type,surgical treatment,short-term prognosis

別冊請求先

〒409-3898 山梨県中央市下河東1110 山梨大学医学部附属病院第2外科 木村 光裕