日本小児循環器学会雑誌  第26巻 第2号(99-105) 2010年

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著者

青木 寿明1),稲村 昇2),河津 由紀子2),萱谷 太2)

所属

市立堺病院小児科1),大阪府立母子保健総合医療センター小児循環器科2)

要旨

背景:新生児期に重症化する先天性心疾患(CHD)をスクリーニングするために2002年から胎児心臓スクリーニング検査(FHS)の普及を近隣の医療機関を対象に開始した.FHSの普及効果と問題点について検討した.
方法:対象は1995年から2008年に当院で行った胎児心エコー検査1,743例と新生児入院症例528例.FHS開始前の7年間(1995~2001年),開始後の7年間(2002~2008年)の2期間にわけ,FHS普及による当科への影響を後方視的に検討した.
結果:(1)胎児期に診断されたCHDの数は後期に有意に増加した.(2)新生児入院症例における胎児診断占有率は後期に有意に増加し,2008年には61%となった.(3)後期にCHD疑いでの紹介が有意に増加した.(4)他臓器疾患の合併がないものが後期に増加する傾向にあった.(5)後期に流出路断面像で診断できる疾患が増加したが総肺静脈還流異常は依然診断が困難であった.(6)胎児診断例の生存率は前期50.3%,後期63.9%と後期に増加した.また1カ月未満での死亡は前期21.1%,後期14.2%であった.(7)新生児入院症例において胎児診断の有無で予後の差はなかった.
結語:FHSによりCHDの胎児診断数は増加した.しかしCHDをもつ児の予後の改善は証明できなかった.また総肺静脈還流異常などスクリーニングレベルでは診断が困難な疾患が存在する.さらなる診断,予後の向上,また胎児診断された親の心理的ケアをどうするかが今後の課題である.
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キーワード

prenatal diagnosis,congenital heart disease,screening

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〒590-0064 大阪府堺市堺区南安井町 1-1-1 市立堺病院小児科 青木 寿明