日本小児循環器学会雑誌  第26巻 第2号(113-118) 2010年

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著者

竹田 津未生1),岩本 洋一1),石戸 博隆1),増谷 聡1),,先崎 秀明1),小林 俊樹1),岩崎 美佳2),枡岡 歩2),,鈴木 孝明2),加藤木 利行2)

所属

埼玉医科大学国際医療センター小児心臓科1),小児心臓外科2)

要旨

背景:胎児期に見られるEbstein奇形などの三尖弁逆流では出生後に肺血管抵抗の低下とともに逆流が軽減することが知られている.反して,体心室房室弁逆流では,出生後後負荷,前負荷の増加により逆流が増強する可能性がある.
方法:2002~2008年に経験した胎児体心室房室弁逆流27例を対象とした.胎児房室弁逆流の重症度は,カラードプラ検査によりI~IV度に分類し,I度,II度,III度以上の3群に分け逆流の重症度と出生後転帰の関係を検討した.
結果:初回検査時,逆流(-)2例,I度11例,II度6例,III度4例,IV度4例であったが,3例で重症度の変化,2例で子宮内胎児死亡があり,最終検査時は,I度13例,II度5例,III度4例,IV度3例であった.最終検査時I度,II度,III度以上の3群で在胎週数,出生体重,合併疾患,体心室構造,流出路構造,area-shortening fractionに差はなかった.I度の13例中,12例は出生後外科的治療を要さなかったが,修正大血管転位の1例でIII度に進行し,肺動脈絞扼術を施行した.II度の5例中,2例は外科的治療を要さなかったが,3例は出生後進行し,乳幼児期に外科的介入を要した.III度以上の7例中,3例が生後数時間~1週間で死亡,3例で循環不全のため新生児期に外科的介入を行ったが救命できず,大動脈弁狭窄に合併した1例のみ,出生早期からの大動脈弁に対するカテーテル治療により救命が可能であった.
結語:体心室房室弁逆流は胎児期に中等度以上となるものでは出生後増悪し,外科的介入を要すものが多い.胎児期III度以上のものでは外科的介入不可であったりごく早期の形成術が必要で,救命できない症例も多かった.
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キーワード

prenatal diagnosis,fetal heart disease,mitral regurgitation,atrioventricular valve regurgitation,outcome

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