日本小児循環器学会雑誌 第26巻 第2号（168-175） 2010年
著者
坂崎 尚徳1)，丹羽 公一郎2)，中澤 誠3)，赤木 禎治4)
所属
兵庫県立尼崎病院小児循環器内科1)，千葉県立循環器病センター成人先天性心疾患診療部2)，財団法人脳神経疾患研究所附属南東北病院小児・生涯心臓疾患研究所3)，岡山大学循環器疾患治療部4)
要旨
背景：Eisenmenger症候群(以下ES)に対する新戦略の評価には，ES患者の現状を知ることが不可欠だが，本邦における臨床像の検討は少ない．
方法：1998～2003年の多施設研究のデータベースからES 67例(男28)の臨床経過を調べ，ability index(AI)悪化に関連する因子を検討した．
結果：初診時年齢の中央値は6歳(0～55歳，15歳以上18例)，最終受診時年齢の中央値は29歳(18～56歳)，15歳以降の経過観察期間の中央値は12年(0～28年)であった．死亡例は4例，すべてcomplex anatomy例であった．21例のAIが悪化し，最終受診時AI≦2の症例は46例(68%)であった．全身合併症は，27/67(40%)に認め，喀血(16)，痛風(10)，脳膿瘍(4)，腎不全(4)，肺血栓(3)，脳梗塞(2)等であった．成人期治療は，抗心不全治療(48)，抗不整脈治療(15)，抗血小板療法(12)，在宅酸素療法(24)等であった．AI悪化群では，complex anatomyの頻度が高く(67% vs 37% p=0.02)，AI不変群より最終受診時の心胸郭比の平均値が高かった(60±1.7% vs 56±1.2% p=0.045)．一方，最終受診時の経皮酸素飽和度の平均値は2群間で有意差がなかった．
結論：従来の報告通り，complex anatomyの予後は不良であったが，AIの悪化は，経年的に進行し，低酸素血症より心機能障害によることが示唆された．
平成21年6月3日受付
平成21年10月30日受理
キーワード
Eisenmenger syndrome，ability index，complex anatomy，hypoxemia，cardiac dysfunction
別冊請求先
〒660-0828 兵庫県尼崎市東大物 1-1-1 兵庫県立尼崎病院小児循環器内科 坂崎 尚徳