日本小児循環器学会雑誌  第26巻 第3号(227-233) 2010年

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著者

金 基成1,3),安藤 和秀1),朝海 廣子1),林 泰佑1,3),金子 正英1),三崎 泰志1),齊藤 一郎2),関口 昭彦4),賀藤 均1)

所属

国立成育医療研究センター循環器科1),手術・集中治療部2),現・東京大学大学院医学系研究科小児医学講座3),佐野市民病院外科4)

要旨

背景:近年,経皮的心肺補助(PCPS)による劇症型心筋炎症例救命の報告が増加しているが,劇症型を含めた小児急性心筋炎全体の予後についての検討は少ないため,当施設における予後を検討する.
方法:2002~2008年に当施設にて入院加療を行った小児急性心筋炎25名26症例(男女比15:11,1例再発)に対し,診療録を用い後方視的に検討した.
結果:心筋炎発症時年齢は0カ月~12歳11カ月(中央値4歳5カ月).生存は81%(21/26例)で,うちPCPS導入例の生存率は63%(5/8例)であった.心臓移植を施行された症例はなかった.PCPSを導入後死亡した3例の死因はいずれも脳幹死であり,PCPS導入前に心肺蘇生を施行されていた.生存例は最終フォロー時において全例全身状態良好で,心臓超音波検査における左室駆出分画は全例0.47以上であり神経学的後遺症を遺した症例はなかった.死亡例において心肺蘇生を要した例や心室頻拍・細動を認めた例が有意に多かった.
結論:当施設におけるPCPS導入例を含めた小児急性心筋炎症例の生命・心機能予後は比較的良好であった.さらなる予後改善には早期の診断および高次施設への搬送が重要である.

全文平成21年9月15日受付
平成22年1月13日受理

キーワード

acute myocarditis,fulminant myocarditis,percutaneous cardiopulmonary support

別冊請求先

〒113-0033 東京都文京区本郷 7-3-1 東京大学大学院医学系研究科代謝生理化学教室 金 基成