日本小児循環器学会雑誌  第26巻 第4号(317-323) 2010年

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著者

宮田 大揮1),柳 貞光1),上田 秀明1),林 憲一1),康井 制洋1),小坂 由道2),梶原 敬義2),武田 裕子2),麻生 俊英2)

所属

神奈川県立こども医療センター循環器科1),心臓血管外科2)

要旨

背景:乳幼児の重症僧帽弁閉鎖不全症(severe mitral regurgitation(SMR))は報告が少なく,その病因論も確立していない.本研究の目的は,乳児期発症例の臨床像と中期予後を明らかにすることである. 方法:2004年から2008年までに経験した乳児期mitral regurgitation(MR)6例と幼児期MR 5例を発症時期および重症度,中期予後の観点から後方視的に検討した. 結果:来院時ショック状態であったSMRは4例.乳児期発症MR例にのみ認め,内科治療を先行させたが,DICおよび循環不全が進行し,早期外科的介入にて救命した.幼児期発症は,術前に重篤な症例はなく,発症から手術までは4カ月から2年であった.病変部位と術式については,乳児期発症の症例では,腱索断裂が多く,幼児期には腱索の延長や弁の合わさりが不十分なものであった.SMRに対しては,2例が人工弁置換術,2例が人工腱索と弁輪縫縮を施行していた.SMRの中期予後は,cardio thoracic ratio(CTR)も平均51%と心拡大も認めていない.MRはtrace~mildで経過良好である. 結論:SMRは進行が速く致死的な疾患となりうるため迅速な外科的介入が必要である.SMRは,急性期を乗り越えることができれば中期予後は良好である.

平成20年11月11日受付
平成22年3月24日受理

キーワード

mitral regurgitation,infant,shock

別冊請求先

〒232-8555 横浜市六ッ川 2-138-4 神奈川県立こども医療センター循環器科 宮田 大揮