日本小児循環器学会雑誌  第27巻 第2号(88-95) 2011年

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著者

河津 由紀子1),稲村 昇1),石井 良1),寺嶋 佳乃1), 青木 寿明1),浜道 裕二1),萱谷 太1),盤井 成光2), 川田 博昭2),岸本 英文2)

所属

大阪府立母子保健総合医療センター小児循環器科1),心臓血管外科2)

要旨

背景:ファロー四徴兼肺動脈弁欠損(TF/APV)は,出生後に呼吸不全を合併し予後不良で稀な疾患である.
方法:TF/APV13例(胎児診断9,出生後診断4)を対象とし,その生命予後から生存群(A群)6例と死亡群(D群)7例に分類.そして2群における胎児期と出生後の経過,肺動脈の形態を比較検討した.
結果:胎児期:A群では2例に動脈管開存を確認し,羊水過多や胎児水腫は全例で認めず.D群では動脈管開存例はなく,羊水過多を3例,胎児水腫を2例に認めた.出生後:A群では人工換気を2例に要し,1例は段階手術を,他の5例は心内修復術を終了.D群では胎児死亡2例を除いた5例中の4例で出生直後より人工換気を要し,1例で心内修復術を施行.肺動脈の形態:A群は全例で左右肺動脈が二股に拡張したClover型であった.D群では7例中3例は肺動脈が球状に拡張したBalloon型であった.
結論:TF/APVの動脈管開存は予後良好を,羊水過多や胎児水腫は予後不良を示唆した.Balloon型はClover型に比し人工換気が多く,生命予後も有意に不良であった(p < 0.05)ことから,肺動脈形態が生命予後を予測する因子となり得ると考えられた.

平成22年4月22日受付
平成22年12月14日受理

キーワード

absent pulmonary valve, tetralogy of fallot, prognosis, configuration, pulmonary artery

別冊請求先

〒594-1101 大阪府和泉市室堂町840
大阪府立母子保健総合医療センター小児循環器科 河津 由紀子