日本小児循環器学会雑誌  第27巻 第3号(111-117) 2011年

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著者

小野 稔

所属

東京大学心臓外科

要旨

小児における重症心不全に対する機械的循環補助はECMOが標準的である.しかし,ECMOによる長期補助は困難であるために,欧米を中心に小児用補助人工心臓の臨床応用が進められている.わが国では,小児用装置がないために成人用の体外式補助人工心臓を使用してきたが,体重20 kg未満では容易ではない.Berlin Heart社のExcorは新生児から成人体格までのサイズが使用でき,すでに800例以上の装着が行われ,1年生存率で約70%を達成している.2010年7月に臓器移植法が改正され,わが国においても小児心臓移植が可能となった.しかし,待機期間が長期に及ぶことは免れず,補助人工心臓が不可欠になる.このような中,Excorの導入に向けた医師主導治験が開始された.早期の承認が期待される.わが国および欧米において,小児用植込み型補助人工心臓の研究開発が進行中である.成人と同じように小児においても自宅療養が可能なシステムの早期臨床導入が望まれる.

2011年3月15日受付
2011年4月6日受理

キーワード

extracorporeal membrane oxygenation, ventricular assist device, heart transplantation, end-stage heart failure, cardiomyopathy

別冊請求先

〒113-8655 東京都文京区本郷7-3-1
東京大学心臓外科 小野 稔