日本小児循環器学会雑誌  第27巻 第3号(118-120) 2011年

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著者

福嶌 教偉

所属

大阪大学医学部附属病院移植医療部

要旨

欧米では,小児においても心移植は,末期的心不全の外科的治療として定着している.わが国では1999年に脳死臓器移植が開始されたが,15歳未満の脳死臓器提供の意思が認められないことから,改正法施行までに国内で心臓移植を受けた小児は3例に過ぎず,多くの小児が海外で心臓移植を受けてきた.
 現状を打開するために,改正法が2010年7月17日に公布され,「本人の意思が不明な場合には,家族の書面による承諾で脳死臓器提供が可能」となり,臓器提供者の年齢制限がなくなるため,国内でも体の小さな子どもが心臓移植を受けられるようになった.しかし,臓器提供に関する施行規則などで,①脳死・心停止後に関わらず虐待を受けた児童(18歳未満)からの臓器提供を禁止,②知能障害のある小児は臓器提供の見合わせなどが定められ,2011年1月末現在,児童からの脳死臓器提供は行われていない.改正法施行後半年たった現在でも移植の現場,提供の現場などにさまざまな課題があり,おのおのに対応する体制整備が必要である.

2011年2月21日受付
2011年4月5日受理

キーワード

heart transplantation, Revised Organ Transplantation Law, oversea transplantation, organ procurement, establishment of organ transplantation system

別刷請求先

〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-15
大阪大学医学部附属病院移植医療部 福嶌 教偉