日本小児循環器学会雑誌 第27巻 第6号(270-274) 2011年

著者

西岡 貴弘1),富田  英2),澤田まどか1),松岡  孝1),曽我 恭司1),黒子 洋介2),山邊 陽子2),伊藤 篤志2),石野 幸三2),上村  茂2)

所属

昭和大学横浜市北部病院こどもセンター1),同循環器センター2)

要旨

腸骨大腿静脈の閉塞および高度狭窄の2例に対し,ステント留置を行った.症例1:ステント留置時4カ月の女児.総肺静脈還流異常術後,肺静脈狭窄.在胎38週に体重2,292 gで出生.日齢14心内修復術,生後2カ月時,肺静脈狭窄の解除術と心房中隔欠損作成術を施行.生後3カ月,左右肺静脈にExpressTM Vascular LDステント(Express)を留置.生後4カ月時の後拡大時,右総腸骨静脈の閉塞を認めた.0.018インチラジフォーカスガイドワイヤーの硬端が閉塞部位を容易に通過し,Expressを2本留置.7カ月時のフォローアップでステント内には狭窄を認めなかったが,ステント間狭窄を認め,Expressを追加留置.生後10カ月時ステントは開存.症例2:1歳7カ月の女児.在胎38週に2,492 gで出生.両大血管右室起始,心室中隔欠損,部分肺静脈還流異常,動脈管開存,左上葉先天性のう胞性腺腫様奇形・左肺分画症のため日齢1に肺葉切除術施行.生後1カ月時肺動脈絞扼術,動脈管結紮術を施行された.低酸素血症が進行したため,1歳7カ月,ステントによる心房中隔欠損拡大術時に右腸骨大腿静脈高度狭窄を診断.SasugaTM(Boston Scientific Co.)にて前拡大の後,Expressを2本留置.2歳1カ月時ステント内は開存.閉塞または高度狭窄を来した腸骨大腿静脈へのExpress留置は,カテーテル留置のための静脈再建術として,短期的には有用と考えられた.

2008年12月26日受付
2011年10月11日受理

キーワード

ilio-femoral veins, occlusion, stenosis, cardiac catheterization, stent

別刷請求先

〒224-8503 神奈川県横浜市都筑区茅ヶ崎中央35-1
昭和大学横浜市北部病院こどもセンター 西岡 貴弘