S-I-2
心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖症(PA + VSD)の外科治療戦略と遠隔成績
福岡市立こども病院心臓血管外科1),福岡市立こども病院循環器科2),九州大学医学部心臓外科3)
塩川祐一1),角 秀秋1),西村陽介1),宮本和幸1),中野俊秀1),崔 禎浩1),総崎直樹2),石川司朗2),福重淳一郎2),安井久喬3)

【目的】PA + VSDに検討を加え,外科治療における問題点,治療戦略を考察する.【対象】外科治療を行ったPA + VSD 192例の内,根治術に到達したのは132例であった.姑息手術は,体肺動脈短絡術(SPS)174回,UF 34回,SPS + 肺動脈形成 6 回,右室流出路形成術 5 回であった.根治術時年齢は中央値3.8歳(1 カ月~22歳),3 カ月以下が11例であった.29例に一期的根治術を行った.MAPCAを伴った43例中25例に根治術を行い,5 例に同時UFを行った.右室流出路再建は自己組織使用45例,導管87例であった.肺動脈形成を89例に行った.追跡期間は平均6.4年.【結果】根治術では早期死亡 0,遠隔死亡 2,根治術非到達ではそれぞれ 1,15であった.出生後根治術非到達率は 5 年で55%,1991年以前と1992年以降ではそれぞれ 5 年で77%,20%(p < 0.0001)であった.術後早期のRV/LV圧比は,MAPCA群で高かった(0.68 vs 0.53,p = 0.016).再手術を32人に対し35回行った.導管置換24,遺残VSD閉鎖 3,右室流出路狭窄解除 3,三尖弁形成 2,肺動脈形成術 2,AVR 1 であった.術後15年の再手術回避率は44%で,右室流出路に自己組織非使用群の再手術回避率が高かった.遠隔期のCTRは平均58%で当院におけるTOF根治術の53%に比し大きく(p < 0.0001),特にMAPCA群で大きかった(60.2% vs 57.4%,p < 0.0001).術後続発症は有意なPR 21例,TR 10例,末梢性肺動脈狭窄16例,AR 6 例,その他15例を認めた.特に 3 カ月以下の根治術で末梢性PS(6/11 vs 10/121,p < 0.0004),TR(4/11 vs 6/121,p < 0.004)の頻度が高く,右室流出路に自己組織使用群でPR(13/45 vs 8/87,p < 0.005)が多かった.【結語】(1) 根治術到達率は近年向上した.(2) 右室流出路再建に自己組織を用いた症例の再手術回避率は高いが,術後PRが問題となる.(3) 乳児期早期の根治手術は,救命しうるが術後続発症(PS,TR)の頻度が高く,再検討の必要がある.

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