B-I-2
Fontan型手術を行ったApicocaval juxtaposition症例の検討
神奈川県立こども医療センター
北堀和男,長田信洋,宮地 鑑,宮本隆司,金本真也

【目的】Fontan型手術は,術中の心筋保護や術後の不整脈といった点からextracardiac TCPC(e-TCPC)が主流となりつつあるが,心尖部がIVCと同側にあるApicocaval juxtapositionは解剖学的位置関係によりe-TCPCが困難であることが多い.当院でFontan型手術を行ったApicocaval juxtaposition症例は,無脾症の群(ASP群)と,一方の心室が低形成なatrioventricular discordanceの群(AVD群)に分類でき,術式および再手術例に差が見られた.また,解剖学的位置関係を比較するため,Fontan型手術前のangiographyにおいて,IVCからPAまでの最短距離(nearest route;NR)及び心尖の対側を廻るextracardiac routeを想定した距離(ER)を測定し比較検討した.【対象】当院でe-TCPCを開始した1995年以降のFontan型手術40例のうちApicocaval juxtaposition症例 9 例(23%)が対象で,ASP群が 4 例,AVD群が 5 例であった.【結果】術式はASP群では,intraatrial conduitが 1 例,lateral tunnelが 1 例で,心尖対側に導管を導くe-TCPCを行った 2 例は順調に経過した.一方,AVD群は,RA-PA anastomosisが 2 例,intraatrial conduitが 1 例,lateral tunnelが 1 例で,e-TCPCは 1 例あったが,心尖同側に導管を導くe-TCPCで術後に導管の血栓閉塞により再手術を要した.また,ASP群では,ERがNRの平均1.4倍なのに対して,AVD群では平均1.6倍であった.【まとめ】Apicocaval juxtaposition症例は,AVD群では心尖対側を廻るe-TCPCが容易でないが,ASP群では可能である場合がある.理由として,ASP群では心尖対側の心房が縦長の右房形態で外側に無理なく導管を導くe-TCPCが可能であるが,AVD群では心尖対側の心房が横長の左房形態で外側の経路を遮られるため,心尖対側に導管を導くe-TCPCは困難であったと考えられた.指標としてIVCからPAまでの最短距離(NR)及び心尖の対側を廻ると想定した距離(ER)の比を算出したところ,ASP群はAVD群に比して短かった.

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