C-II-5
呼吸切迫を伴う新生児期総肺静脈還流異常の検討
山形大学医学部第二外科1),山形大学医学部小児科2)
上所邦広1),島崎靖久1),内田徹郎1),小鹿雅隆1),鈴木 浩1),田辺さおり2),早坂 清2)

【目的】新生児期に呼吸切迫を伴い術前から人工呼吸補助を必要とする総肺静脈還流異常の手術成績は必ずしも良好な成績を収めている訳ではない.呼吸切迫を呈し,人工呼吸管理を必要とした最近の例を振り返り検討した.【対象】肺静脈閉鎖を含む総肺静脈還流異常 4 例.手術時日齢は 0 ─17日,体重2070─3200gであった.全例心臓超音波検査のみで診断し,vertical veinのない肺静脈閉鎖が 1 例あった.術前状態は,肺静脈閉鎖以外の 3 例のうち 2 例で気管内挿管,術前のBase excessは-4.2─ -2.7,動脈血酸素分圧は41.6─84.3torrであった.肺静脈閉鎖例では人工呼吸管理下でも術前のpH 6.9,Base excess -25.9,動脈血酸素分圧27.4torrと著明なアシドーシスと低酸素血症を呈していた.全て緊急手術となった.手術は全例軽度低体温体外循環下に動脈管の結紮,共通肺静脈左房吻合,ASD閉鎖を行った.vertical veinの閉鎖は肺静脈閉鎖以外の 3 例で行った.体外循環時間63─120分,心停止時間30─55分であった.【成績】全例生存した.肺静脈閉鎖例以外の 3 例では術後経過は比較的順調であり術直後から体肺動脈血圧比は0.23─0.43に低下した.術後22─64時間で抜管し,経口摂取は術後 2─3 病日に開始し得た.NO投与,腹膜灌流施行例はなかった.肺静脈閉鎖例では,術後の肺高血圧クリーゼのためにNOを 2 日間投与,低心拍出のため腹膜灌流を13日間施行,術後14日目に抜管し得た.術後25─50日で全例軽快退院した.【結語】呼吸切迫の為,術前人工呼吸管理を必要としても総肺静脈還流異常の手術成績は良好であった.肺静脈閉鎖例では術前状態が極めて不良であり,術後肺高血圧が残存,クリーゼを生じたが,NOが有効であった.

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