D-II-1
ファロー四徴症児の心臓カテーテル検査;塩酸モルヒネは前投薬として適当か?
東京女子医科大学附属日本心臓血圧研究所循環器小児科
清水美妃子,稲井 慶,中澤 誠

【背景】塩酸モルヒネはファロー四徴症の低酸素発作の治療に一般的に良く用いられ,カテーテル検査の麻酔においても同様である.しかし,他の鎮静麻酔薬と比して適当か否かが検討された報告はない.【目的】カテーテル検査の前投薬に使用する麻酔薬;塩酸モルヒネとペチヂンハイドロクロライド(オピスタン)を比較し,低酸素発作の起こしやすさを検討する.【対象】1998年 1 月~2001年 9 月までの間に当科に入院した 3 歳以下のファロー四徴症の児46例.両群間の年齢,性別,体重に有意差はなかった.また,赤血球数に有意差はなかったが,Hb値では,オピスタン群13.7 ± 3.8g/dl,塩酸モルヒネ群15.5 ± 2.8g/dlと,前者が有意に低かった(P = 0.045).低酸素血症の程度は,毛細血管血酸素分圧,下行大動脈酸素飽和度,動脈血酸素飽和度のいずれにおいても両群間に有意差はなかった.【方法】前投薬に塩酸モルヒネを使用した24例とオピスタンを使用した22例について,前投薬からカテーテル終了後24時間に低酸素発作をきたしたかどうかについて調べた.【結果】低酸素発作をきたしたのは46例中10例.塩酸モルヒネ群24例中 8 例に対して,オピスタン群22例中 2 例と有意に塩酸モルヒネ群が多かった(P = 0.0465).また,オピスタン群で低酸素発作を起こした 2 例は,発作の既往があった.これに対して,塩酸モルヒネ群では発作の既往があったのは 8 例中 5 例で,3 例は既往のない症例で起こっている.【結論】塩酸モルヒネ群の方がHbが高く,低酸素発作のリスクが低いと考えられるにもかかわらず,低酸素発作はオピスタン群に比して多かった.ファロー四徴症児のカテーテル時の麻酔の前投薬として,塩酸モルヒネはオピスタンに比して低酸素発作予防の面で適当でないと考えられる.

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