E-II-1
小児心電図右室肥大判定基準の再検討(TV1陽性について)
埼玉医科大学附属病院小児心臓科
星 礼一,増谷 聡,石戸博隆,竹田津未生,先崎秀明,小林 順,小林俊樹

【背景】小児循環器学会小児心電図心室肥大判定基準(以下学会基準)では,TV1陽性かつR V1 > lSlは 8 日から 3 歳未満では 5 点となり単独でも右室肥大と判定されるが,3 歳以上ではTV1陽性の項目はない.【目的】3 歳以上の右室負荷を来す疾患で,TV1の傾向を検討し,健常児との相違を検討すること.【対象】1993年から2001年まで当科にて心臓カテーテル検査目的に入院した 3 歳から11歳の肺動脈弁狭窄 5 例(右室圧負荷,圧較差22mmHgから51mmHg,平均36.2mmHg,3 歳から11歳,平均4.4歳),心房中隔欠損21例(右室容量負荷,3 歳から11歳,平均6.7歳),対照は心疾患を有さない小児外科疾患患児50名,最終的に正常と判定された小学 1 年学校心電図検診の300例とした.【結果】学会基準では肺動脈弁狭窄症例の点数は 0 点 4 人,6 点 1 人で,右室肥大が 1 名であった.右室肥大と判定された 1 名の 6 点の内訳は,(1) RV1 = 1.8mV R > lSl (2) lSV6l = 0.8 mV R ≦ lSl (3) axis 150°.一方TV1が陽性の症例は 4 例で認められた.心房中隔欠損では 1 例で右室肥大疑の基準を満たし,TV1が陽性の症例は認められなかった.対照ではTV1の陽性はほぼ認められなかった.【考察】3 歳から11歳の肺動脈弁狭窄 5 例のうち学会基準で右室肥大疑いと判定されたのは 1 例のみで,右室肥大または右室肥大疑いと判定されなかった 4 名すべてTV1が陽性であった.一方TV1陽性はこの年齢群の健常児でみられることは稀であり,3 歳以上であっても,少なくとも幼児期においては,TV1陽性であれば右室肥大(圧負荷),またはその疑いとして判定することができ,学校心電図検診等において留意すべき点と思われた.

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