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P-II-10 |
成人Eisenmenger type VSDおよび右室内狭窄の一例 |
川崎幸病院心臓血管外科1),順天堂大学胸部外科2)
南 和1),渡辺 隆1),品田敬子1),山崎元成2),川崎志保理2) |
【はじめに】Eisenmenger typeの心室中隔欠損症(以下Eisenmenger VSD)は大きな膜性周囲欠損に筋性流出路中隔の前方偏位と大動脈騎乗を合併することにより,単純なVSDと区別される疾患である.一般的に高肺血流量のため乳児期早期よりの手術介入を要するが,今回我々は大動脈弁右冠尖逸脱(RCCP)と右室内狭窄の合併により特殊な経過を呈した成人のEisenmenger VSDを経験したので報告する.【症例】症例は41歳男性,3 歳時にVSDと診断され手術を勧められるが拒否.学童期の運動制限はなし.3 年前より心不全症状出現.心臓超音波検査では右室内に異常筋束を認め,高圧腔と低圧腔を認めた.VSDは直径 8mmの膜性周囲欠損でRCCPを認めた.心臓カテーテル検査(mmHg)ではLVp = 130,RVp(高 / 低圧腔) = 110/55,PAp = 40,Qp/Qs = 2.7であった.【手術】上行大動脈送血 / 上下大静脈脱血にて人工心肺を開始,大動脈遮断後,経右房的に心内を観察した.大動脈騎乗と軽度の漏斗部中隔の前方偏位を認めた.VIFから右室自由壁にかけての異常筋束により,VSDの上縁が把握できなかった.右室切開を追加,異常筋束切除の後VSDの形態が漸く明瞭になった.VSDのtypeはI + II型,sizeは35×25mm,VSDの上方はRCCP,中央は異常筋束によって覆われ,下方のみ右室高圧腔に開口している形態であった.VSDはpledget 28針を用いePTFE patch(40*30mm)にて閉鎖し得た.人工心肺からの離脱は容易で術後経過も順調であった.【考察】この症例の経過は,出生時はlarge VSDにて高肺血流の状態であったが,乳児期早期にRCCPによりシャント量が減少,手術介入なしに成人まで経過し得た.右室内狭窄は学童期以降に出現,徐々に進行したと考えられた.【結語】(1) 成人Eisenmenger VSDおよび右室内狭窄の一例を経験した.(2) RCCPおよび右室内異常筋束の合併によりVSDの形態の術前・術中診断に難渋した.(3) 成人先天性心疾患の長期放置による特殊な形態および血行動態を有した注意すべき一例と考えられた. |
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