A-II-4
二次性肺高血圧症におけるナトリウム利尿ホルモン測定の意義
横須賀共済病院小児科1),東京都立清瀬小児病院循環器科2)
上田秀明1),三浦 大2),葭葉茂樹2),大木寛生2),小林康介2),佐藤正昭2)

【目的】肺血流増加型肺高血圧症例におけるANP,BNPの意義を明らかにすること.【背景】従来原発性肺高血圧症などの肺高血圧(PH)の評価に,BNPが有効とされてきた.近年ANPも肺血管抵抗(Rp),右室機能の評価に有効とする報告が散見される.【対象と方法】対象は100%酸素負荷をおこなった肺血流増加型PH 9 症例.心臓カテーテル検査時年齢は,3 カ月~2 歳(中央値 5 カ月).全例,人工呼吸器管理下に,5 分間の100%酸素負荷施行前後でのANP,BNPを測定した.100%酸素負荷施行前後値の差をそれぞれ酸素負荷前値で除したものをそれぞれANP変化率,BNP変化率とし,各種パラメーターの酸素負荷施前後の変化率とStepwise regression重回帰分析を用い,比較検討した.【結果】(1) 酸素負荷後にANP,BNPは有意に低下した(ANP負荷前89 ± 35,後69 ± 33pg/ml,p = 0.027,BNP負荷前41 ± 14,後35 ± 12pg/ml,p = 0.016).肺動脈収縮期圧(PAsys),肺動脈拡張期圧(PAdia),肺動脈楔入圧(PCW),Rpはそれぞれ低下を認めた(p = 0.034,0.018,0.006,0.034).Qp/Qsは増加を認めた(p = 0.049).両大静脈圧,右房圧,右室収縮期圧,右室拡張期末期圧に有意な変化は認められなかった.(2) Stepwise regression重回帰分析では,負荷前後のANPはそれぞれRpと正の相関を認めたが,有意な正の相関を呈さなかった.ANP変化率は,Rp変化率とのみ強い相関を認めた.一方Rp変化率は,ANP変化率とQp/Qs変化率と強い相関を認めた.(3) Stepwise regression重回帰分析では,負荷前後のBNPはそれぞれRpと有意な相関関係は認められなかった.BNP変化率は,いづれの変化率とも相関を認めなかった.【結論】(1) 肺血流増加型PH症例では,ANPはBNPよりも鋭敏にRpの推移を反映し,Rpの指標となる.Rpが大きく変動する急性期には,ANPの測定は有効である.(2) BNPは,血行動態の変化の際に極めて短時間(5 分以内)に変動する.

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