A-II-8
モノクロタリン(MCT)誘発肺高血圧(PH)ラットにおけるビタミンC(Vit C)の発症抑制効果
徳島大学医学部小児科
眞鍋哲也,森 一博,黒田泰弘

【目的】近年ビタミンCの抗酸化作用によるリモデリング抑制効果の結果,高血圧や動脈硬化の改善が報告されている.今回我々は原発性肺高血圧症のモデルとしてモノクロタリン誘発PHラットを使用しビタミンCの有効性を調べた.【方法】6 週齢の雄SDラットに60mg/kgのMCTを 1 回皮下注しPHラットを作成した.MCT投与翌日より連日100mg/kgのVit Cの腹腔内注射を行った.1 週間ごとに 4 週目まで右室圧,右室・左室心筋重量比,摘出肺動脈でのアセチルコリン(Ach),ニトログリセリン(NTG)による弛緩反応およびKClによる収縮反応を以下の 3 群で検討した(n = 10~15).(1) 正常ラット + vehicle(正常群),(2) PHラット + vehicle(無処置群),(3) PHラット + Vit C(処置群)【結果】Vit Cの腹腔内投与によるラット血中濃度の変動は投与前5.9 ± 0.9μg/mlから投与 2 時間後に19.2 ± 3.1μg/mlに上昇し,24時間後には6.6 ± 1.2μg/mlに低下していた.(人におけるVit C 2g経口投与による血中濃度の推移は投与前8.1 ± 0.1μg/mlから投与 2 時間後に20.0 ± 1.9μg/mlに上昇することがあるとの報告がある.)正常群に比べて無処置群では右室圧,右室心筋重量比が著明に上昇していた.無処置群ではAchおよびNTGの弛緩反応も極度に低下し,KClによる収縮反応も低下していた.処置群では上記の指標のうち右室圧,心筋重量比およびAchとNTGの弛緩反応に対し改善を認めたが(p < 0.05),KClによる収縮反応に改善は認めなかった.【考察および結論】Vit Cはモノクロタリンによる肺動脈平滑筋および内皮機能低下による弛緩反応の低下を抑制することにより,PHの進行を抑制したと考えられる.その機序としてVit Cの作用の一つである抗酸化作用を考えると,抗酸化作用がリモデリングを抑制したと推察できる.

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