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B-II-2 |
胸骨正中切開後の胸骨変形予防の新しい試み:PDS糸による胸骨─肋軟骨固定法 |
京都府立医科大学付属小児疾患研究施設小児心臓血管外科1),京都府立医科大学付属小児疾患研究施設小児内科2)
宮崎隆子1),山岸正明1),春藤啓介1),松下 努1),新川武史1),北村信夫1),浜岡建城2) |
【目的】胸骨正中切開後の胸骨変形は美容上問題となり,患者のQOLの低下を招く.当施設では2000年11月より胸骨正中切開後の胸骨前方突出予防のため,胸骨閉鎖後 0 号PDS(Polydipxanone Suture)を用いた肋軟骨固定を行っている.今回,本法による胸骨変形の有用性について検討した.【対象】2000年11月より2002年 2 月までの胸骨正中切開による開心術139例を対象とした.年齢は 5 日から21歳で平均4.0歳であった.【方法】全例full sternotomyで手術を行った.閉胸時,胸骨を 5~6 針のワヨラックスを用いて結節縫合で閉鎖後,胸骨外縁より約 1cm外側の肋軟骨に 0 号PDSを用いてZ縫合を通常 2 針かける.この際,内胸動脈の損傷を避けるため肋軟骨には全層にかけないよう留意が必要である.【成績】全例胸骨し開および胸骨変形(前方突出)を認めなかった.1 例に胸骨感染を認めた.【結論】胸骨前方突出は術後比較的早期より生じることから,この要因は胸骨切断面の癒合不全ではなく,開胸器の影響で胸骨─肋軟骨関節に下方に凸となる様な負荷がかかることによると考えた.このため胸骨─肋軟骨関節を術後数カ月間固定すれば,前方突出は回避出来ると仮定した.この仮説の下に吸収糸による胸骨─肋軟骨関節を外側より固定する本術式を考案した.PDSは合成モノフィラメント糸であり,生体内抗張力保持期間は14日で70%,42日目で25%と比較的長く,単純抗張力,結節抗張力ともに十分固定が可能である.また吸収期間は180~210日であり,骨軟骨成長にも影響を及ぼさないと考えられる.【結語】胸骨閉鎖後胸骨および胸骨─肋軟骨関節を充分な抗張力を有する吸収糸で前方より固定する本法は胸骨変形(特に前方突出)の予防に有用であり装具などの着用も不要である. |
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