K-VI-2
機能的単心室に対するDamus-Kaye-Stansel手術:適応・術式と成績
大阪府立母子保健総合医療センター心臓血管外科1),大阪府立母子保健総合医療センター小児循環器科2)
三浦拓也1),岸本英文1),川田博昭1),前畠慶人1),秦 雅寿1),中島 徹2),萱谷 太2),稲村 昇2),石井 円2),角由紀子2)

【目的】Fontan(F)手術を最終手術とする機能的単心室のうち,大動脈弁下狭窄(SAS)や心室間孔(BVF)の狭小化で心室流出路狭窄をきたしやすい例に対するDamus-Kaye-Stansel(DKS)手術の適応,手術術式と成績について検討した.【対象】機能的単心室例にDKS手術を行った 9 例(手術時年齢0.9─6.0歳)を対象とした.診断は三尖弁または僧帽弁閉鎖 2 例,単心室 4 例,両大血管右室起始 3 例で,大動脈縮窄 / 離断を1/2例に合併し,8 例では初回手術にPABを行っていた.【心室流出路狭窄の評価】SASまたはBVFの造影最小径の正常大動脈弁輪径に対する百分率を%SASとして評価し適応判断の一助とした.【DKS手術】DKS手術はF手術準備手術[両方向性Glenn手術(BDG)2,central shunt 1]と同時に0.9から2.1歳の 3 例(%SAS = 52─63%)に,F手術と同時に2.8~4.6歳の 5 例(%SAS = 67─92%)に,F手術後に 6 歳の 1 例(%SAS = 82%)に施行した.初期の 3 例では切断した肺動脈幹を大動脈に端側吻合する術式を,後期の 6 例では大動脈肺動脈両方を横切して側々吻合し,遠位の大動脈と端々吻合するLamberti変法を行った.【成績】手術死亡は同時に施行したBDGが成立しなかった1.1歳の 1 例で,BDGのtake downを行うも失った.他の 8 例はすべてFontan手術が終了している.【DKSの効果】術後生存 8 例のDKS後の心室大動脈間圧差はなく,心Doppler検査による旧大動脈弁逆流(AR)は無 4,trivial 3,moderate 1,旧肺動脈弁逆流(PR)は無 3,trivial 3,moderate 1 と概ねtrivial以下であった.1 例のmoderate ARは術前よりあったもので,他の 1 例のmoderate PRはDKS前に著しく拡大した肺動脈を大動脈に端側吻合した例であった.【まとめ】(1) F手術対象例でDKS手術は心室流出路狭窄の程度が強いほど低年齢すなわちF手術準備手術の段階から必要となった.(2) DKSに起因する手術死亡はなく,術後半月弁逆流の発生は軽微であった.術後半月弁逆流の発生と術式との関連は明らかでなかった.

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