S-II-8
先天性心疾患術後心不全に対する両室ペーシング療法
長野県立こども病院循環器科1),長野県立こども病院心臓血管外科2)
安河内聰1),里見元義1),今井寿郎1),瀧聞浄宏1),石田武彦1),神崎 歩1),原田順和2),竹内敬昌2),岡 徳彦2),石川成津矢2)

【目的】今回我々は,NYHA分類IV度の心不全を呈した 2 歳の無脾症候群姑息術後低心拍出症例に対して,両室pacing療法施行例を経験したので利点と問題点を報告する.【症例】心内奇形は,{SLX}ECD,DORV,PA,CA,TAPVC(IIa).左右心室はほぼ同サイズでupstair-downstair位を呈していた.両側BT短絡術後(右:1 カ月時,左:2 カ月時),生後 4 カ月に心筋炎に罹患.左室収縮低下を生じたが内科的治療で改善し外来で管理されていた.23カ月時顔面浮腫,網状チアノーゼを生じ心不全のため再入院.心エコー上心室壁運動は著明な低下を示し,特に左室はdyskineticで心室造影での左室駆出率は -4%と強い左右心室間のasynchronismを示した.カテコラミンなどの内科的抗心不全治療に反応せず低心拍出量症候群(LOS)が進行したため25カ月容量負荷減少目的で両方向性Glenn手術と同時に,左右心室収縮の協調改善目的で心筋電極植え込みによるDVPを施行した.【両室pacingの方法】先端が 2 極に分かれたY型心筋電極(Medtronics社製)を右側心房に 2 箇所固定し,同型の心筋電極の陰極側を左室心尖部に,陽極側を右室流出路付近に固定して,DDDモード(心拍数150bpm時AV-delay 50msec)でpacingした.(Medtronics社製κDR 721)至適AV delayの設定は,術前カテ時に右側心房,左室心尖,右室に心内電極をおき,一定の心拍数下でAV delayを変更しながら,QRS時間が最小となりドプラエコー上大動脈弁部血流速波形のVTIから推定した心拍出量が最大となるAV時間から求めた.【術後経過】術後心不全は次第に軽快し,術後 5 カ月でカテコラミンから離脱し術後 6 カ月退院となった.カテコラミン離脱後のDVP時の心拍出量(エコー計測)は,DVP-off時の1.36倍を示した.【結語】機能的単心室における左右心室間のasynchronismによるLOS例に対しDVPは有効な治療手段となりうる.

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