C-V-6
自家心臓移植法による左肺原発肺芽腫の心内転移巣摘出術および左肺全摘術の同時合併手術
京都府立医科大学小児疾患研究施設小児心臓血管外科1),京都府立医科大学呼吸器外科2),京都府立医科大学小児疾患研究施設小児内科3)
山岸正明1),春藤啓介1),高橋章之1),新川武史1),宮崎隆子1),北村信夫1),戸田省吾2),加藤大志朗2),浜岡建城3)

左肺原発の悪性肺芽腫の左房,左室内転移を認めた男児例に対する自家心臓移植による腫瘍摘出例を報告する.【症例】6 歳,男児,主訴:胸痛.胸部CT像では左肺上葉に充実性腫瘍,下葉無期肺,縦隔の著明な右方偏位を認めた.UCGでは右上PVより腫瘍がLA内に侵入,有茎性に僧帽弁(MV)を越えてLV内まで到達.全身の腫瘍塞栓の危険性があったため緊急手術となった.【手術】仰臥位,胸骨正中切開.体外循環,心停止下にSVC切断,右側LA~LA上壁を切開.腫瘍塊は右上PVからLA内に侵入しLA側壁に付着.MV前尖にも付着し,先端はLV内に達していた.PV開口部にて腫瘍茎を切断.LA壁,MVから腫瘍塊を剥離した.ついでIVC,Ao,PAを切断.左右PV開口部を含むLA後~左側壁,左心耳を残して心房中隔付着部からM弁輪に沿ってLA壁を切開し,心臓を体外に摘出.別テーブルに準備したice slush入りtray内に心臓を固定し,LV内の残存腫瘍を摘出.MV前尖の迅速凍結切片から腫瘍細胞が検出されたためMVを切除しMVR施行.心筋保護液は間欠的に注入.体外心臓手術の間に呼吸器外科チームにより原発巣を含む左肺全摘出,気管傍リンパ節郭清術,左側心膜切除術を同時施行.左PV入口部LA壁,左心耳は腫瘍塊とともに切除.右PV入口部周囲のLA壁のみ残存した.心臓を摘出しているため気管傍リンパ節の郭清は容易であった.肺手術終了を待って心臓を同所性に戻し,まず左房壁を0.6mm厚Gore-Tex patchにて補填.Ao吻合後,遮断解除.心拍動下にIVC,SVC,PAの順に再吻合した.左側心膜欠損部位にGore-Tex patchをhammock状に補填し,心臓が左胸腔内に落ち込んで心基部に捻れが生じるのを予防した.Ao遮断時間148分,CPB時間225分.体外循環からの離脱は容易であった.【考察】肺芽腫は悪性度が高く,根治性を高めるためには腫瘍の外科的完全摘出が必須である.自家心臓移植法は肺合併病変を持つ摘出困難な腫瘍に対して合理的で有用な一期的術式である.

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