C-VI-2
Duchenne型筋ジストロフィーに合併する拡張型心筋症に対するβ遮断剤を用いた抗心不全療法についての検討
埼玉医科大学小児心臓科
小林俊樹,先崎秀明,増谷 聡,石戸博隆,竹田津未生,星 礼一,小林 順

【目的】呼吸不全を有したDuchenne型筋ジストロフィー(以下DMD)症例に対し在宅人工呼吸器療法が普及し,延命が可能となってきた.しかし長期生存によって,多くの症例で拡張型心筋症を合併することが報告されてきている.また心筋の変性が呼吸筋より先に進行し心不全を早期に発症する症例群も報告されており,この群では強心剤,利尿剤,ACE阻害剤を用いた従来の抗心不全治療では症状の進展を抑えることができず早期に心不全死することが報告されている.今後,拡張型心筋症による心不全はDMD症例の主要死因となる可能性があるため,同疾患に対する抗心不全治療に対し検討を行った.【症例及び方法】7 例の心機能低下を有するDMD症例.3 例は呼吸不全の前に心不全症状が出現した群であり,他の 4 例は人工呼吸下に心機能低下が観察され,治療が開始された群である.全例ともに国立精神・神経センター武蔵病院をはじめとする専門施設より,心機能低下や心不全症状を主訴に紹介された.ジゴキシン,利尿剤,ACE阻害剤またはATI阻害剤,β遮断剤を主とした抗心不全治療を行い,心エコーに心不全液性因子の検索を加えて経過観察を行った.【結果】心不全を早期に呈する疾患群において,心不全の発症早期にβ遮断剤を加えることにより心不全症状の改善及びその進展予防に効果があったが,β遮断剤の投与時機を逸した症例は短時間で心不全は進展し,末期状態でのβ遮断剤投与は副作用のみを示した.2 群ともACE阻害剤,β遮断剤の投与により臨床症状と心エコー所見は改善を示すが,経時的に駆出率は再び悪化を示した.しかし左室拡張末期径や心不全液性因子に目立った変化は示さず,駆出率20%以下に低下した症例でも心不全症状は呈していない.【考察及び結語】DMDに対してβ遮断剤を加えた抗心不全治療は有効であったが,健常人の拡張型心筋症とは異なる臨床経過も見せるため今後の追跡と検討が必要と考えられた.

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