N-II-6 |
先天性心疾患術後患児の循環変動からみた体温コントロールの一考察 |
杏林大学医学部付属病院集中治療室
西山久美江,佐藤明子,金川美代子,石井幸子,谷井千鶴子 |
【はじめに】先天性心疾患術後の循環管理において,中枢末梢温度差(以下TG)を 2℃以内に保つことは後負荷を減少させ,心拍出量維持の重要なケアであると言われている.私達は小児の術後に末梢保温を行っているが,その効果を客観的に評価した事はなかった.今回,連続心拍出量測定装置を用いて,中枢・末梢温と循環との関連性を考察した.【研究の対象と方法】ファロー四徴症根治術術後の 2 歳の患児.保温は温風式加温装置(商品名:ウォームタッチ)を用い36~40℃で設定.末梢温は体表温センサーを足背へ貼付し測定.血液温・血圧・心拍数・末梢血管抵抗係数(以下SVRI)・心係数は連続心拍出量測定装置(商品名:Picco)を用いた.ICU入室直後から 1 時間間隔で24時間のデータを分析した.【結果】OPE室で中枢温36.9℃に復温.ICU入室時の末梢温は33.5℃,中枢温は38.2℃であった.3 時間以降は末梢温36.3~38.0℃,中枢温38.5~39.4℃で,TGは1.5~2.6℃となった.その結果,SVRIは低下,心拍数,心係数の上昇を認めた.中枢温を下げる為,ウォームタッチを下半身へ移動し,背部・頭部・頸部・鼠径部のクーリングを強化した.その結果,12時間後にはTGが 2℃以内,18時間後には 1℃以内にコントロールされ,SVRI,心拍数,心係数は正常域となった.【結語】中枢温38.5℃以上になると心拍数,心係数が上昇し心負荷がかかる.中枢温37℃前後でTG 1℃以内に保つと心負荷を軽減できる.従って,小児の術後は中枢温37.0℃台でTG 1℃以内に保つ体温コントロールが必要であると考えられる. |
| 閉じる |