N-III-3
W-switch術後PCPSに加えてIABP補助を用いて救命し得た 1 例の検討~コンパートメント症候群を合併した患児の看護を経験して~
手稲渓仁会病院集中治療室
井坂由美子,井上真奈美,倉橋由恵,佐藤里香,畠山淳子,澤田小百合,青葉登美子

I-TGAの症例は先天性心疾患の約 1%足らずを占める比較的稀な疾患である.今回I-TGAの症例で,術後の心原性ショックに対してのPCPSだけでは左室機能低下を改善できず,IABPを併用し循環を維持し,途中数々の合併症を併発したものの救命し得た一例を経験した.合併症のなかでもコンパートメント症候群を併発し心肺補助の管理の難しさを実感した.本症例を振り返り,重症例に対する心肺補助施行にあたり,心肺機能回復までどのように関わっていく事が重要となるか再確認したので報告する.【症例紹介】A君,8 歳男児,入室期間:平成13年 7 月31日~8 月21日,臨床診断:I-TGA,TR,VSD,smallVSD,s/pPAB×4,術式:W-swich,TVP.術後PCPSサポートでICUに入室するが出血多く心タンポナーデとなり,開胸血腫除去施行した.左心負荷強まりIABP挿入しCHFにて水分管理開始する.術後 2 日目より高K血症にてVT頻発した.IABP挿入による左下肢虚血が原因と考えられ,下肢還流したがコンパートメント症候群を合併し,減張切開施行.その後循環動態は徐々に安定し補助循環は 1 週間で抜去.最終的に抜管まで至り小児科病棟に転棟となる.【まとめ】補助循環を行う上で注意すべき合併症は,出血・血栓・下肢の阻血・感染症が考えられる.本症例では特に阻血の影響が現れてしまった.出血傾向や感染症にもなり術後管理には困難を来したが,この症例を通して,重篤な症例に対しても統一された知識と技術を提供していく事の重要性を認識し,それらを安全に実施していくことで早期回復への援助になることを実感した.集中治療の場で求められる看護のあり方としてこの経験を今後に生かしていきたい.

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