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腹部内臓器奇形を合併する心房内臓錯位症候群症例の検討
聖隷浜松病院心臓血管外科1),聖隷浜松病院小児循環器科2)
打田俊司1),小出昌秋1),初音俊樹1),金子幸栄2),武田 紹2),水上愛弓2),西尾公男2),瀬口正史2)

【目的】心房内臓錯位症候群の臨床症状は合併心奇形,合併腹部内臓器異常などで形成される.合併心奇形や脾臓形態については様々な報告を見受けるが,腹部内臓器奇形に関しては未だ不明なところが多い.今回,我々が経験した心房内臓錯位症候群において,腹部内臓器奇形合併例・非合併例について検討を行った.【対象】当院でフォローアップしている症例のうち詳細の判明している20例(男10例,女10例;無脾症 8 例,多脾症12例)を対象とした.【結果】無脾症・多脾症で心疾患に特徴的傾向は無かった.内臓器奇形を 6 例(無脾症 2 例,多脾症 4 例)に合併,4 例に外科的手術を必要とした.内訳は腸回転異常,胆道閉鎖症,総胆肝yN腫,総腸間膜症が各 1 例,横隔膜ヘルニア 2 例であった.在胎日数は内臓奇形合併群で151.0 ± 11.8日,非合併群で152.3 ± 12.7日,出生時体重は2688 ± 281g,2955 ± 440gであり,ともに統計学的に有意差を認めなかった.4 例中 2 例で心臓手術が先行,1 例で同時,1 例で腹部内臓器手術が先行した.これら 4 例では死亡例無く,2 例で根治済,2 例でFontan型手術待機中である.合併心奇形に特徴的な偏りは認めなかった.胆道系合併症は多脾症 2 例に合併していた.総腸間膜症の症例は剖検時に診断されたが術前に腸管閉塞などの合併既往は無かった.胆道閉鎖症例は総肺静脈還流異常症を合併しており,水分管理も相反し,全身状態悪く重症例であったが心内修復により心不全改善した後に胆道閉鎖解除を行い救命しえた.【考察】腹部内臓器奇形と心房内臓錯位症候群の関係は在胎日数・出生時体重・心疾患などとも特徴的な傾向は認めなかったが,胆道系合併症は従来報告されている様に多脾症例に合併した.総肺静脈還流異常・胆道閉鎖症合併症例は治療リスクも大きく,成功報告例は少ないが綿密な心不全・全身管理により救命しえた.

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