P-III-52
小児慢性心不全に対するβ遮断薬療法
山形大学医学部小児科
田邉さおり,鈴木 浩,佐藤 哲,仁木敬夫,早坂 清

【背景】成人では心不全患者に対するβ遮断薬の有用性が認められているが,小児での経験は少ない.【目的】小児慢性心不全に対するβ遮断薬療法の有効性,安全性,問題点に関して検討する.【対象と方法】慢性心不全 6 例の基礎疾患は,Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)に合併した拡張型心筋症(DCM)3 例,心筋炎後心筋症 1 例,特発性DCM 1 例,左冠状動脈起始異常に合併した心筋梗塞(OMI)1 例である.自覚症状,血圧,心拍数,胸部X線,心エコー図,血中BNP値,臨床経過を検討した.【結果】β遮断薬の開始時年齢は 4~17(中央値14.5)歳,投与期間は 7 日~35カ月(中央値23カ月)であった.全例で開始前にACE阻害薬が,5 例でジゴキシン・フロセミドが投与された.使用薬剤はカルベジロール(C)5 例,メトプロロール(M)1 例で,Cの初回投与量は2.5mg/日または0.05mg/kg/日で,外来(4 例)では 4 週毎,入院(1 例)で は1 週毎に倍増し約 4 カ月間または 4 週間で維持量(20mg/日または0.4mg/kg/日)とした.Mの初回投与量は2.5mg/日(0.09mg/kg/日)で2.5mgずつ増量し,45mg/日(1.1mg/kg/日)で維持した.副作用は 2 例にみられ,血圧低下(62mmHg)1 例は投与を中止したが,9 カ月後に心不全が増悪し死亡した.めまい 1 例は経過観察とした.心拍数は低下傾向であった.開始時の心エコー図で左室拡張末期径(LVDd)は正常の113~160%,左室短縮率(LVFS)は0.09~0.17(中央値0.16)で,中止例はLVDd 147%,LVFS 0.09であった.導入後最終経過観察時LVFSは0.17~0.20(中央値0.18)で,開始前に比べ 4 例で改善し 1 例で変化がなかった.開始前のBNPは5.9~488(中央値157)pg/ml,開始後BNPは5.4~224(中央値84)pg/mlで,4 例で低下し 1 例で変化がなかった.【結語】小児の慢性心不全で,ジギタリスや利尿薬,ACE阻害薬など一般的な心不全治療の効果が不十分な場合,β遮断薬療法が有用と考えられるが,その開始時期などさらに検討が必要と思われた.

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