P-III-54
重症心不全と低血糖
自治医科大学小児科
尾上彰則,山形崇倫,市橋 光,白石裕比湖,桃井真里子

我々は経過中に低血糖をきたし,その後血糖コントロールに難渋した重症心不全の 2 症例を経験したので報告する.【症例 1】10カ月男児.27週 2 日C/S,体重820gにて出生.出生後RDS,総動脈幹遺残にて人工呼吸管理,利尿剤投与にて治療,その後慢性肺疾患に移行しHOTにて日齢282に退院した.今回は肺炎にて入院.入院後呼吸管理を開始,肺炎を契機にDIC,SIRSとなり内科的治療を開始した.入院直後より認めた低血糖は徐々に進行し,輸液糖濃度は最大21%,糖必要量は7.3mg/kg/minであった.種々の内科的治療を試みたが心不全は改善せず入院後39日で死亡した.【症例 2】1 カ月女児.21trisomyの児であり肺炎にて入院.超音波検査にて完全型心内膜症欠損,動脈管開存と診断.強心剤および利尿剤を投与,感染に伴いDICとなり,心不全も進行した.低血糖が遷延し最大糖濃度30%を使用した.その後も心不全は改善せず,入院後79日で死亡した.2 症例とも低血糖の原因として代謝異常の検索では明らかな異常は認めなかった.一方DIC,肝障害のためアミノ酸,脂肪酸製剤の使用に制限があり,経腸栄養も進まず慢性的な低栄養状態であった.【考案】低血糖の原因として種々の要因によるインスリン分泌の亢進(低酸素,慢性的なカテコラミンの増加,HANPの分泌の増加,インスリンクリアランスの増加),グルカゴン分泌の低下,低栄養に伴う糖質供給の低下,貯蓄能の低下による糖新生の阻害などが挙げられ,単一要因ではなく複合的なものと考えられる.今後重症心不全患者に対しては低血糖の存在を念頭におき,輸液,栄養管理を行っていく必要があると思われた.

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