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P-III-68 |
少量の左右短絡は心臓に対して負荷となりうるか? |
北海道大学医学部小児科
村上智明,鈴木靖人,佐々木康,上野倫彦,小田川泰久 |
【目的】左右短絡性の先天性心疾患においては,その自然歴から主に短絡量に基づいて手術適応が決定されている.今回我々はこれらの疾患において短絡量が小さい症例の心負荷について検討した.【対象と方法】対象は心室中隔欠損(VSD)・心房中隔欠損(ASD)・動脈管開存(PDA)の診断で当科にて心臓カテーテル検査を施行し肺体血流比(Qp/Qs)が 2 未満でかつ弁逆流がI度以下の46例.肺高血圧を呈した症例はなかった.これらの症例における心房性ナトリウム利尿ペプチド(HANP),脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の値について検討した.【結果】右心系容量負荷と考えられるASD 12例においてQp/Qsは1.68 ± 0.03(平均 ± 平均誤差,以下同)であった.HANP 34.5 ± 3.6pg/ml,BNP 14.2 ± 0.9pg/mlで,HANPが高値を呈した症例が 2 例,BNPが高値を呈した症例が 2 例あったが,正常値であった症例と比較してQp/Qsに有意な差を認めなかった.左心系容量負荷と考えられるVSD,PDA 34例におけるQp/Qsは1.23 ± 0.01であった.HANP 29.8 ± 0.7pg/ml,BNP 11.6 ± 0.3pg/dlで 4 例においてHANPが,3 例においてBNPが高値を呈していた.HANP,BNPが高値を示した症例のQp/Qsは1.53 ± 0.05で正常値であった症例に比較し有意に高値であった(t = 3.0,p = 0.02).coil閉鎖術を施行したPDA症例のうち 6 例(うち 1 例は術前BNP高値)では術後 6 カ月以降にHANP,BNPを再検しているが,全例で低下していた.【結論】少量の左右短絡でも心臓に対する負荷になりうる.この程度の負荷が平均寿命が長くかつ死亡原因として心疾患が増加している現代において,どのような意味があるのか検討が必要である. |
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