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P-IV-69 |
ASD標準術式としての縮小胸骨正中切開法の限界 |
筑波大学付属病院心臓血管外科1),筑波大学臨床医学系外科2)
松原宗明1),平松祐司2),厚美直孝2),榊原 謙2) |
【背景】小皮膚切開,胸骨下部部分縦切開による縮小胸骨正中切開法(いわゆるMICS)は,主に美容上の利点から多くの施設で採用され,当施設でも約 3 年間主にASDに応用してきた.しかしながら,視野が狭小で安全性に疑問が生じ,研修医の標準術式としての適応限界を再評価した.【対象と方法】1994年 4 月から2000年 7 月に当施設で行ったASD 32例(手術時年齢 2 歳~14歳)について,MICS群(M群)11例,Full Sternotomy群(F群)21例に分け検討した.同群間で年齢,体重,手術時間,大動脈遮断時間または心室細動時間,人工心肺時間,術後ドレナージ総量,術後挿管時間を比較した.【結果】年齢,体重,身長に有意差は認めなかった.手術時間(M群:218 ± 25,F群:178 ± 29分)及び人工心肺時間(M群:71 ± 13,F群:48 ± 14分)は,M群で有意に長かった(p < 0.05).M群で上行大動脈カニュレーションの際に不測の出血を 2 例,下大静脈テーピングの際に右下肺静脈の損傷を 1 例経験したが,いずれも事なきを得た.大動脈遮断時間または心室細動時間(M群:26 ± 9,F群:22 ± 6 分),術後ドレナージ総量(M群:168 ± 48,F群:231 ± 80ml),術後挿管時間(M群:225 ± 120,F群:180 ± 94分)には両群間に有意差は認めず,全例無輸血で,術後経過は良好であった.胸骨が前方突出する変形は,当施設では経験していない.【結論】縮小胸骨正中切開法は,美容上有利ではあるが,低侵襲を裏付ける根拠に乏しく,狭小な視野で行うが故の,特に大動脈操作にあたっての危険性が存在する.従って,本法は研修医が心臓外科入門にあたって行うには安全性の確保に問題があると考え,当施設では最近皮膚切開のみを限局するFull Sternotomy法を研修医が行なうべきASDの標準術式とした. |
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